研究実績の概要 |
前年度に引き続き、発現ベクターの構築およびウイルスの作成と発現実験を行った。標的としているシトクロムP450は、単体では作用せず補酵素としてP450レダクターゼが必要となる。ネッタイイエカからTotal RNAを抽出し、逆転写酵素によりcDNAを合成した。これを配列確認用のプラスミドに挿入し、大腸菌によるクローニングの後、常法により塩基配列の確認を行い、正常なアミノ酸をコードしているものを選抜した。前年にクローニングしたシトクロムP450の分子種および今年度クローニングしたシトクロムP450レダクターゼを発現バキュロウイルス作成用のプラスミドベクター(Invitrogen社(現Thermo Fisher Scientific社)、pFastBac Dual)にGibson Assembly法を用いて挿入した。プラスミドを大腸菌DH5αを用いてクローニング後、挿入した配列が確認されたコロニーを選抜して液体培養し、ウイルス作成用のプラスミドを得た。このプラスミドを発現用ウイルス作成用の大腸菌菌株であるDH10Bacに形質転換した後、挿入した配列を含むbacmid DNAをPCRにより確認した。Bacmid DNAが確認されたコロニーを液体培養した後、The PureLink HiPure Plasmid DNA Miniprep Kitを用いて、bacmid DNAを精製した。10% FBSを含むGrace培地で培養したSf9細胞に、作成したbacmid DNAをトランスフェクション試薬(Cellfectin)と共に加え、形質転換した後、72時間培養した。培養液を1000xgの遠心で分画し、その上清を100,000xgで遠心して沈殿を回収し細胞外発芽バキュロウイルスを得た。沈殿を0.5%tween20/PBS溶液懸濁した後、超音波処理を行った後、100,000xgで遠心して、沈殿をTris-HCl緩衝液に懸濁し酵素標品とした。酵素標品のCO差スペクトルを確認したが、活性体に見られる450nmの吸収極大および失活した酵素に見られる420nm共にはっきりと確認できなかったため、今後の発現条件および酵素標品の回収法の更なる検討が必要である。
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