研究課題/領域番号 |
25450081
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青野 俊裕 東京大学, 生物生産工学研究センター, 助教 (10372418)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 根粒菌 / マメ科植物 / 共生 |
研究実績の概要 |
Azorhizobium caulinodansは熱帯水生マメ科植物セスバニアの共生根粒菌である。本菌は植物体上の亀裂から植物体内に侵入し、宿主組織の細胞死を部分的に誘発するために、病原菌的側面を有するといえる。本菌の新奇病原菌的側面として、本菌がreb遺伝子群と呼ばれる宿主細胞の殺傷に関わる遺伝子群を保持し、reb遺伝子群の発現を抑制させることで共生を成立させていることを本研究に先立ち見いだしている。本研究ではreb遺伝子群の発現制御機構の全容を明らかにすると共に、reb遺伝子群が宿主への毒素等の輸送に関わる新奇分泌装置に関与するという仮説を提起し、それを証明することを目的としている。 前年度までにreb遺伝子群がオペロンを形成し(rebオペロンと命名)、rebオペロンの転写発現はPraRと命名した転写抑制因子とRebRと命名した転写促進因子により直接的に制御されていることを見いだした。本年度は、rebオペロンの発現制御機構の全容解明に向けて、これらの転写因子がどのような環境状態の時に転写因子として機能するのかを解析した。rebオペロン-lacZ転写融合株を作成し、ベータガラクトシダーゼ活性を指標にrebオペロンの発現を制御する環境要因を探索したところ、RebRの転写促進因子としての機能は温度により制御されており、一方、PraRの転写促進因子としての機能は環境中の炭素源の種類により制御されていることが判明した。 一方、rebオペロンの高発現により共生が破綻するpraR破壊株を元にトランスポゾン挿入変異株ライブラリー(9600株)を作成し、共生が回復する変異株をスクリーニングしたところ、完全に正常な共生を行う変異株を1株、部分的に共生が回復した変異株を3株取得した。これらの変異株で破壊されている遺伝子群にはR-bodyの機能解明に役立つ重要な遺伝子が含まれている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[課題1]「reb遺伝子群の発現制御気功の解明」においては、rebオペロンのプロモーターに直接作用する転写抑制因子PraRと転写促進因子RebRの機能発現が外環境の炭素源と温度によりそれぞれ制御されていることを新たに見いだした。reb遺伝子群の発現を制御する環境因子を見いだしたのは本研究が初めてである。 [課題2]「R-bodyと未知なる毒素による宿主殺傷機能の解明」においては、9600株の変異株を全て宿主植物に接種し、praRが破壊されているにもかかわらず正常な茎粒を形成する変異株を取得でき、昨年度末に掲げた推進方策の通りとなった。 以上により、おおむね順調であると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
rebオペロンの直接的転写因子であるPraRとRebRの機能発現が炭素源と温度によりどのように制御されているのか、という疑問を分子生物学的に解明することを27年度の課題として追加し、rebオペロンの発現制御機構の全容を明らかにする。また、課題2で取得した変異株群において破壊されている遺伝子群を明らかにし、それらの機能解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
大型植物であるセスバニアを用いたスクリーニングは、その準備や栽培等に時間および労力が多くかかる。そのため、26年度では研究補助員の勤務時間を増加させ、スクリーニングの拡大化を図る予定であった。しかし、研究補助員および所属学生の工夫により、集約的に植物を栽培してスクリーニングを行う方法が開発された。従って、補助員の人件費は予定ほどには増加しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度分の人件費を27年度分では消耗品等の購入に追加し、26年度に見いだした現象の詳細な解析を充実化させていく予定である。
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