研究課題/領域番号 |
25450090
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吹谷 智 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (10370157)
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研究分担者 |
小椋 義俊 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 助教 (40363585)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トランスポゾン変異導入 / 転移因子 / Bifidobacterium longum / 転移因子 / INSeq法 / 腸内生存 / 定着因子 |
研究実績の概要 |
平成26年度は前年度に引き続き,次世代シークエンサーを用いて変異株集団中の各変異株の同定と菌数の変化を測定する方法であるINSeq法に適したトランスポゾン変異導入法をビフィズス菌で確立するため,以下の2つの実験を進めた. 1. ISBlo11を用いたトランスポゾン変異導入系の構築と転移の検証:転移因子TLS143(挿入配列の命名法に従いISBlo11と命名)を用いたトランスポゾン変異導入系を構築した.まず昨年度同定した,キシロースによる強力な発現誘導が可能なプロモーターPfruEKFGを転移酵素ORFの上流に連結し,転移酵素発現ベクターを構築した.また,ビフィズス菌選択マーカーを持つ大腸菌pUCレプリコンにISBlo11の両末端の逆位反復配列を連結したトランスポゾンベクターを構築した.高い転移効率を達成するために,宿主株Bifidobacterium longum 105-A株に転移酵素発現ベクターを導入し,発現誘導を行って転移酵素を十分に供給した後,トランスポゾンベクターを細胞に導入するという二段階の形質転換で転移を誘導した.その結果,1,000 cfu/μg DNAという非常に高い効率でトランスポゾン変異株を作出することができた.ゲノムへのトランスポゾンの挿入部位の塩基配列を解析した結果,挿入部位は多様であることが明らかになった. 2. 新たな転移因子を用いたトランスポゾン変異導入系の検討:1.の系の確立と並行して,他菌種のINSeq解析に用いられているmariner型トランスポゾンHimar1C9を入手し,それをビフィズス菌で機能するように改変を行った.種々の検討の結果,温度感受性ベクターpKO403にHimar1C9の転移酵素発現カセットとトランスポゾン(転移に必要な逆位反復配列を薬剤耐性遺伝子の両端に付加して構築)を連結したベクターを構築してテストしたところ,トランスポゾンの転移が観察された.現在ゲノムへのトランスポゾンの挿入部位について検証を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,ISBlo11を用いたトランスポゾン変異導入系を確立することができた.これはビフィズス菌の挿入配列をトランスポゾン変異導入に応用した初めての例であり,今後の応用が期待できる.上記の系については,若干の転移の偏りが観察されたため,新たな転移因子Himar1C9を用いて,トランスポゾン変異導入系の確立を並行して進めたが,こちらも転移が観察された.Himar1C9を用いた系については今後転移の偏りがないことを検証する必要があるが,次年度は両者のうちどちらかでINSeq解析に適した系を選択して進めることが可能になった.これらの事を考えると,今年度の研究はおおむね順調に推移していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
まずHimar1C9を用いた系の検証を進め,トランスポゾン変異導入株ライブラリー作成に用いる系を確定する.変異株の取得効率が低い場合は,形質転換,回復培養,寒天培地での選択条件などの検討を行い,1,000 cfu/μg DNA程度の変異株取得効率を達成できるようにする.確定した系を用いて,形質転換試験を複数回行い,2万~3万株からなる変異株ライブラリーを構築する.INSeq解析の予備検討を行い,構築したライブラリーにおいて,ゲノム全体に偏りなく挿入変異が入っているかどうかを,次世代シークエンサーを用いて検証する. ライブラリーの構築と並行して,コンベンショナルマウスへのビフィズス菌投与試験の検討を進める.コンベンショナルマウスへの定着率が低い場合,過去に我々が確立したビフィズス菌を種ごとに選別するFISH-フローサイトメトリー法 (Dinoto, Fukiya et al., Appl. Environ, Microbiol., 2006) を用いて,セルソーターによる盲腸内容物からのB. longumの回収を行う.これにより,腸内細菌叢中の他の腸内細菌由来のDNAがINSeq解析に与える影響を排除できると考えられる.それでも解析が困難な場合は,共同研究者との折衝を進め,無菌マウスへの投与を進められるように,基盤を整備する予定である.これらいずれかの方法で投与試験を行い,マウス盲腸内容物(またはその中の投与株)を回収して,INSeq解析を行い,腸管定着に寄与するビフィズス菌の遺伝子の同定を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画で予定していた高額な試薬である次世代シークエンス解析の消耗品の支出が無かったため.
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次年度使用額の使用計画 |
トランスポゾン変異導入系の確立が終わり次第,次世代シークエンス解析の消耗品を購入し,解析に使用する計画である.
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