研究課題/領域番号 |
25450091
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
長南 茂 茨城大学, 農学部, 准教授 (70312775)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コエンザイムA / アセチル-CoA / マロニル-CoA / パントテン酸キナーゼ / アセチル-CoAカルボキシラーゼ / 有用物質生産 / 大腸菌 |
研究実績の概要 |
コエンザイムA(CoA)は生体内代謝において炭素のキャリアとして機能しており、多くの代謝経路に関与している。本研究の目的は炭素代謝に於いてこの重要なCoAを増産させ、有用物質生産に応用できる大腸菌の分子育種を目指している。CoA生合成経路は5段階の酵素反応から構成されているが、初発反応を触媒するパントテン酸キナーゼ(CoaA)がCoA増産の鍵となっている。昨年度までに3種類ある微生物由来CoaAのうち、CoAによる最終生産物阻害を受けない原核Ⅲ型CoaAがCoA増産には最も適しており、当該遺伝子を保持する低コピー数プラスミドの大腸菌の形質転換体ではおよそ5倍にCoAが増産されることを見出した。しかしながら、この増産は生合成経路の出発物質となるパントテン酸の添加なしには起こらなかった。 そこで、平成26年度はCoA増産に要求されるパントテン酸量およびその供給経路について精査した。大腸菌のCoaA強化菌はパントテン酸の培地への添加量に依存して細胞内CoAレベルが増加し、そのCoAプールを満たすにはmMオーダーでのパントテン酸の添加が必要であることが明らかとなった。次いで、パントテン酸供給経路について解析したところ、β-アラニンを生成するアスパラギン酸-α-デカルボキシラーゼ(PanD)が律速になっていることが分かった。これらの結果を基に、CoA増産にはCoaA強化に加えてPanDの補強も必要であることが分かったので、PanDの発現プラスミドの構築、さらにはCoaAおよびPanDを大腸菌のゲノムDNAに導入するプラスミドの構築も行った。 また、平成26年度は脂肪酸生合成の基質となるマロニル-CoA増産にも着手し、アセチル-CoA カルボキシラーゼ(Acc)とCoaAを共発現させた形質転換体のCoAプールについても解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に原核生物にある3種のパントテン酸キナーゼ(CoaA)のうち、Pseudomonas putida由来原核Ⅲ型CoaAがCoA増産には適しており、本酵素による強化でCoAプールが5倍になることが明らかにされた。平成26年度はCoAプールの増大にはCoA生合成経路だけでなく、パントテン酸の供給系の強化も必須であることが示され、目的達成のためのターゲット酵素(アスパラギン酸-α-デカルボキシラーゼ:PanD)も同定された。CoaAおよびPanDの共発現用プラスミド、およびゲノムDNAに前記2つの遺伝子を導入するためのプラスミドの構築も終えており、最終年度である平成27年度に細胞内CoAプールを解析する準備は整っている。また、マロニル-CoA増産のためのアセチル-CoAカルボキシラーゼ(Acc)の強化については、CoaAおよびAccを共発現させた大腸菌を解析しているところである。 CoA生合成経路強化菌の物質生産への有用性について評価するため、予定を前倒ししてCoA依存性アルコールデヒドロゲナーゼ(AdhE)を利用したアセチル-CoAからエタノールの変換を試みたが、AdhEの耐酸素性が非常に弱く、こちらは難航している。しかしながら、CoAおよびアセチル-CoAの増産は達成されており、新たにCoA増産に必要なパントテン酸供給経路の強化にも着手している。また、前半のCoA増産に関する論文を現在作成しており、研究全体としては順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究結果を基に、平成27年度はパントテン酸キナーゼ(CoaA)とアスパラギン酸-α-デカルボキシラーゼ(PanD)を共発現するCoA生産菌の分子育種を進める。両酵素をコードする遺伝子をプラスミドで共発現する方法とゲノムDNAに導入する2つの方法で前記育種を達成する。脂肪酸生合成の基質となるマロニル-CoAの増産に関しては、CoaAとアセチル-CoA カルボキシラーゼ(Acc)の組合せで増産を試みる。さらに、脂肪酸合成酵素(Fas)を使って、生産菌の有用性を評価することも計画している。 また、平成27年度は最終年度になるため、まとめとなる学会発表および論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定より若干安価に済ませることができたため、千円単位の端数が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度実施分の支払請求額とともに、当初計画通り使用する。
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