本研究は、栄養飢餓を誘導するラパマイシンを作用させた出芽酵母において、余剰となった成熟リボソームが分解されることを、主にrRNA分解の方向から観察し、その分子機構・生理学的意義を明らかにすることを目的とする。 本年度は、ラパマイシンに応答したリボソーム分解を、リボソームタンパク分解の側から検証した。昨年度に行った、エピトープタグを付加したリボソームタンパクに加え、特定のリボソームタンパクに対する特異抗体を用いたウエスタンブロッティングによる定量を行った。いずれの場合においても、ラパマイシンに応答したリボソームタンパク分解が確認された。しかし、その分解の程度はrRNA分解に比べて低く、リボソームタンパク分解とrRNA分解とは独立的であることが示唆された。また、窒素飢餓に応答してリボソームが非選択的オートファジー依存的に分解されるとの報告があった。そこで、本研究で注目するリボソーム分解がこれに依存するかを調べた。しかし、非選択的オートファジーが起こらない株であっても、野生株と同様にリボソームタンパク分解が観察された。これより、ラパマイシンに応答したリボソーム分解は、非選択的オートファジーに依存しないと考えた。 以上も含め、本研究全体から得られた成果は以下の通りである。ラパマイシンを作用させた出芽酵母では成熟リボソームが分解されるが、このうちrRNAはリボヌクレアーゼRny1pにより分解される。また、この分解は、ラパマイシンに誘導される栄養飢餓条件への適応化に必要であることが分かった。このリボソーム分解は、既知のリボソーム分解経路、すなわちリボソームを選択的に分解するリボファジー、非選択的オートファジーのいずれにも依存しないと考えられる。
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