研究概要 |
出芽酵母前胞子膜形成過程におけるリン脂質代謝制御機構とその役割を解明するため、以下の研究を行った。 1 前胞子膜形成におけるリン脂質の細胞内局在変化の解析を行った。遺伝学の実験で関係が示唆されたPI4Pを中心に、各種酸性リン脂質検出用バイオマーカー (PA: Spo20-GFP, PS: lact-C2-GFP, PI4P: Osh2-PH-GFP, PI(4, 5)P2: PLC-PH-GFP)について野生株を用いて胞子形成時の細胞内局在を観察した。以前に報告のあるPA、PI4Pに加えて、PSも前胞子膜形成の初期から前胞子膜に局在することが明らかになった。PI(4, 5)P2については、前胞子膜形成の初期には前胞子膜上に観察されず、伸長後の大きな前胞子膜にのみ観察されることが示された。 2 リン脂質代謝系酵素のいくつかについて、前胞子膜形成時における細胞内局在の変化を、GFP融合タンパク質を用いて解析した。PI4-kinase複合体を形成するタンパク質のうちStt4pとEfr3p、PI4P 5-kinaseであるMss4pが前胞子膜上に局在することを明らかにした。また、spo73破壊株においてこれらの局在は変化しないことが示された。 3 前胞子膜上のリン脂質の組成を操作するため、前胞子膜伸長に欠陥のあるspo73株においてPI4-kinaseおよびPI4-phosphtaseを前胞子膜上に局在化させた。その結果、予想に反してPI4-phosphataseを発現したspo73株において胞子形成の回復が観察され、前胞子膜上のPI4Pのレベルの低下が前胞子膜の伸長と関係する可能性が示唆された。現在この可能性について検討を行っている。
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