研究課題/領域番号 |
25450095
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
垰 和之 東京大学, アイソトープ総合センター, 助教 (00211996)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | リポ蛋白質 / 輸送 / 二成分制御系 |
研究実績の概要 |
私たちは、大腸菌ペリプラズムに存在し、脂質修飾されたリポタンパク質を内膜から外膜へ輸送する役割を持つLolAタンパク質の構造と機能を解析する過程で、そのドミナントネガティブ型変異体の一つが、Rcsリン酸リレー系に依存してlolA遺伝子自身の転写を活性化することを発見した。このことは、「Rcsリン酸リレー系のシグナル入力に関わる外膜リポタンパク質RcsFは、外膜に輸送された後に機能するのではなく、輸送途上で内膜上に滞留することによりRcsCDキナーゼを活性化する」、すなわち、「RcsFはリポタンパク質の外膜への輸送状況をモニターするセンサー分子として機能する」のではないかと考えた。 この仮説の当否を検証するため、昨年度作成したRcsF変異体を用いてin vivo光架橋実験を行った。その結果、RcsFタンパク質のリンカー部分及びC末端領域の一部分と特異的に相互作用するタンパク質が検出された。このRcsFと架橋形成したタンパク質をRcsF側に付加したHisタグを用いて精製し、質量分析したところ、この相手側タンパク質はOmpAタンパク質であることが明らかとなった。Rcs系制御におけるOmpAとRcsF相互作用の役割は今後の検討課題である。 また、RcsFタンパク質において、シグナル感知・伝達に重要な領域を同定するために、部位特異的およびランダムに変異導入したRcsFからその機能に欠損を持つものを同定した。その結果、Rcs系活性化に欠陥をもたらす変異は、C末端領域の一部分に集中していた。この部分は、OmpAと相互作用する部分とは異なっていることから、他の因子との相互作用部位である可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光反応性アミノ酸を用いたin vivo光架橋実験と変異体分離による機能領域地図作製等の実験から、平常時及びリポタンパク質輸送阻害時に、RcsFタンパク質と特異的に相互作用する分子に関する情報が得られつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
RcsFタンパク質内の機能上重要と考えられる領域を昨年度同定することができたので、今年度はこの領域と相互作用する内膜上の因子を同定することを目指す。このため昨年度に引き続き、光反応性アミノ酸を用いた部位特異的光架橋実験を行う。また、昨年度同定した、RcsFとompA相互作用のRcs系活性化における意義についても検討していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
所属研究施設の改修工事の遅延により、放射性同位体を用いた実験の一部が実施できなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
放射性同位体を用いた実験については、今年度実施する予定であり、繰越分はそのために充当する。
|