研究課題/領域番号 |
25450100
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
杉山 峰崇 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80379130)
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研究分担者 |
原島 俊 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70116086)
笹野 佑 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90640194)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Bioethanol / Saccharomyces cerevisiae / Thermoresistance / Xylose fermentation |
研究概要 |
高温耐性の改良について、49℃で旺盛な増殖を示す異種酵母のゲノムDNAを用いてTJ14株およびC7株のゲノムシャフリングを行った。両株が生育できない42℃でスクリーニングを行った結果、コントロール実験では耐性株は得られなかったものの、ゲノムシャフリング実験から高温耐性株を6株得た。42℃における発酵試験を行ったところ、それぞれの親株に比べて2.5倍以上ものエタノール生産収率を示す改良株を得ることができた。 過剰発現で高温耐性を向上させる遺伝子を独自に同定し酵母に導入することによって、高温条件下でエタノール生産収率を向上させることができた。 キシロース発酵性の付与については、キシロース発酵性酵母のゲノムDNAを用いてTJ14株およびC7株のゲノムシャフリングを行った。両株がほとんど生育できないキシロース培地でスクリーニングを行ったところ、多数のキシロース資化性コロニーを得ることができた。しかし、実用できるほど資化能力が高い株を得ることはできなかった。そこで、手法を変更し、先に代謝工学的手法によって基本的なキシロース資化経路を付与した後、ゲノムシャフリングによる発酵能力のさらなる改良を試みることにした。そのため、キシロース発酵性酵母由来のキシロースリダクターゼとキシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子および出芽酵母のキシルロキナーゼ遺伝子を過剰発現させる遺伝子発現カセットを構築し、TJ14株、C7株および上記の高温耐性改良株に導入した。これらの株を用いて、引き続きゲノムシャフリングを行い、キシロース発酵性の改良を行う予定である。 優れたエタノール生産性を示すTJ14株およびC7株の高温耐性と高温条件下でのエタノール生産収率を大幅に向上することに成功したことから、バイオエタノール生産プロセスの効率化・低コスト化に貢献すると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高温耐性の改良については、予定通り順調に進んでいる。今後、得られた改良株を親株にしてゲノムシャフリングを繰り返し行い、エタノール生産効率を確認しながら耐性温度を43℃、44℃…というようにさらに改良する。 加えて、過剰発現で高温耐性を向上させる遺伝子を独自に同定し、高温条件下でのエタノール生産収率を向上させることができた。 キシロースを発酵できないTJ14株およびC7株へのキシロース発酵性の付与については、ゲノムシャフリング法だけではキシロース発酵株を得ることができなかった。そこで、バックアッププランとして計画していたキシロース発酵性酵母由来のキシロースリダクターゼとキシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子および出芽酵母のキシルロキナーゼ遺伝子を過剰発現させ、TJ14株、C7株およびゲノムシャフリングによる高温耐性改良株に基本的なキシロース資化能力を付与した後、ゲノムシャフリングによる発酵能力のさらなる改良を試みることにした。そのため、上記の3つの遺伝子に加えて薬剤耐性マーカーを持つ遺伝子発現カセットを構築し、TJ14株、C7株および42℃高温耐性改良株に導入した。これらの株のキシロース発酵効率を調査した後、キシロース発酵性酵母のゲノムDNAを用いてゲノムシャフリングを行い、当初の予定通りキシロースからのエタノール高生産酵母の開発を進める。
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今後の研究の推進方策 |
高温耐性の改良については、引き続き49℃でも旺盛な増殖を示す異種酵母のゲノムDNAを用いてゲノムシャフリングを繰り返し行い、段階的にスクリーニング温度を上昇させて最終的に45℃までの耐性を示す酵母株の構築を目指す。必要に応じて独自に同定した高温耐性付与遺伝子も過剰発現させて高温耐性化を図る。また、酵母由来のゲノムDNAだけでなく、超高熱性細菌由来のゲノムDNAを用いたゲノムシャフリングも行い高温耐性化のスピードアップの可能性を探る。 リグノセルロース由来の発酵阻害物質であるギ酸、酢酸、乳酸や最終産物であるエタノールへの耐性化を図るため、過剰発現で耐性を向上させる遺伝子の取得や耐性酵母のゲノムDNAを用いたゲノムシャフリングを行い、耐性化およびエタノール生産の向上を目指す。 キシロース発酵性の付与については、代謝工学的手法によりキシロース資化経路を付与した酵母株を構築した後、これらの株にキシロース発酵性酵母であるScheffersomyces stipitisやCandida shehatae由来のゲノムDNAを用いたゲノムシャフリングを行い、キシロース発酵性の改良を目指す。加えて、ゲノムシャフリングによる高温耐性改良株が得られる毎に代謝工学的手法によりキシロース資化経路を導入し、キシロース発酵性改良ためのゲノムシャフリングを行う。そして、より高温条件下におけるグルコース・キシロース同時発酵に挑戦し、エタノール生産効率の向上を示す。
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