研究課題/領域番号 |
25450102
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
廣田 隆一 広島大学, 先端物質科学研究科, 助教 (90452614)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 亜リン酸 / 亜リン酸デヒドロゲナーゼ / 選択マーカー |
研究概要 |
亜リン酸デヒドロゲナーゼ(PtxD)の微生物培養における選択マーカーとしての有効性を評価するために、大腸菌、シアノバクテリア(Synechococcus elongatus)へptxDを導入し、亜リン酸合成培地における増殖を調べた。さらに、当初の予定に加え産業上有用な微生物として利用されている出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Shizosaccharomyces pombe)についても同様に検討を行った。 検討した全ての微生物について、PtxD組換え株の細胞粗抽出液中に亜リン酸依存的なNADH生成活性が認められ、PtxDが機能的に発現していることが確認された。また、亜リン酸合成培地における増殖を調べたところ、全ての株において亜リン酸依存的な増殖が認められ、選択マーカーとして有効であることが示唆された。特に出芽酵母と分裂酵母においては良好な選択性が認められ、亜リン酸合成培地プレート上における形質転換体選択のマーカーとしても有用であることが示された。大腸菌においては、内在性の微弱な亜リン酸酸化活性による選択性の低下が認められた。また、シアノバクテリアにおいては、リン酸使用時の20%程度の最終菌体濃度であった。これらについては、それぞれ選択性を向上させる方策が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PtxDの選択マーカーとしての有効性を4種類のモデル微生物で評価し、それぞれの特徴を明らかにした。特に、出芽酵母と分裂酵母においては良好な選択性が認められ、有用な選択マーカーとして利用されることが期待される。大腸菌やシアノバクテリアについては、機能的なPtxDの発現が認められたものの、高い選択性を得るに至らなかった。しかしながら、それぞれ課題が明確にされ、今後の研究における有用な情報が得られた。研究達成度の自己評価としては、PtxD選択マーカーの有効性評価において良好な結果が得られているが、当初予定していたよりも多くの微生物について検討し、本年度平行して行う予定であった物質生産におけるPtxD発現の効果に関する評価を次年度に行うこととしたことなどから、今年度の達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度以降は当初の計画通り、PtxD発現における細胞内レドックスバランス変化の解析、基質特異性を変化させたPtxD変異体の作製を行う。後者に関しては、亜リン酸培地におけるS. elongatusの細胞収量低下の原因のひとつとして、細胞内NADP(H)/NAD(H)量比とPtxDの基質特異性の不一致が考えられることからNADPに対する基質特異性を変化させたPtxDを作製し、その効果を確認する。また、大腸菌における選択性の低下については、PtxD導入株と非導入株における競合培養を行い、定量的な選択性の評価を行い、有効性の検証を行うと共に、比活性を高めた変異体の作製などによるアプローチも検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物質生産におけるPtxD発現の効果について実験を行うために必要であった測定試薬類を購入しなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度に実験内容も繰り越すため、当初計画と同じ金額の執行を予定している。
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