研究課題
H26年度以降は当初の計画通り、PtxD発現における細胞内リン濃度変化の解析、基質特異性を変化させたPtxD変異体の作製を行った。野生型PtxDでは、NADPを基質として用いた場合よりもNADを基質として用いた場合の方が、亜リン酸デヒドロゲナーゼ活性が高くNADP/NAD利用比は0.0785であった。一方、変異体PtxD-P176Rの場合はNADPを基質として用いた場合の亜リン酸デヒドロゲナーゼ活性が野生型に比して高く0.23であった。またPtxD-D175Aの場合は、NADPを基質として用いた場合の亜リン酸デヒドロゲナーゼ活性が野生型に比して高く0.34となった。さらに、DMの場合は1.63であった。つまり、DMのNADPH利用比は、野生型に比して20.7倍高くなっていることが分かった。以上の結果から、部位特異的変異導入によって、RsPtxDのNADP利用能が向上したことが確かめられた。また、PtxDを導入した出芽酵母・分裂酵母において、ptxDが機能的に発現し、プレート上における直接選択の効率も栄養要求性マーカーとほぼ変わらず、形質転換の選択マーカーとして有効であった。しかし、分裂酵母とは異なり液体培養における最終到達菌体量がリン酸使用時の30%程度であった。そこで菌体内のリン組成を調べてみると、リン酸に加えて亜リン酸の蓄積が認められ、細胞内のリン代謝が正常に機能していない可能性が示唆された。そこでptxDの活性をさらに上昇させることを現在検討している。
2: おおむね順調に進展している
PtxDの選択マーカーとしての有効性を4種類のモデル微生物で評価し、それぞれの特徴を明らかにした。特に、出芽酵母と分裂酵母においては良好な選択性が認められ、有用な選択マーカーとして利用されることが期待される。藻類で利用するためのPtxDとして、NADPに対して特異性が向上したPtxDの変異体を予定していたが、計画通りの性能を示す変異体の取得に成功している。研究達成度の自己評価としては、PtxD選択マーカーの有効性評価において良好な結果が得られており、研究計画もほぼ達成できているが、出芽酵母においてリン酸使用時の生育に及ばないことから、今年度の達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
出芽酵母菌体内において亜リン酸の蓄積が見られていることから、効率的に亜リン酸を使えていない可能性が考えられる。よって、プロモーター強度の増強、発現プラスミドの変更などによってPtxDの発現向上を試みる。また、当初の予定通り、作製したPtxD変異体を藻類に導入し、その効果を検証する。さらに、実用レベルでの使用を想定した未滅菌培養、コンタミネーションリスク評価を行う。
変異体作製が効率的に進み、予定していた予算以内で実験が完了したため。
今年度新たに見出された課題の解決のため、出芽酵母の細胞内リン組成の解析を予定しており、そのための実験試薬類購入に充てる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
J. Biotechnol.
巻: 182-183 ページ: 68-73
10.1016/j.jbiotec.2014.04.012
Appl Environ Microbiol
巻: 80 ページ: 2602-2608
10.1128/AEM.03971-13