研究概要 |
E. corrodens は対数増殖期中期にAI-2を生産するが、定常期ではその活性は劇的に低下する。AI-2活性が低下するメカニズムを調べるために、対数増殖期中期の培養上清からAI-2を精製した。また、定常期の培養上清を硫安分画した。得られた画分を精製AI-2およびMHFとインキュベートしたところ、30%画分により両者のAI-2活性が低下した。このことは、AI-2とMHFが同じ形で不活性化されることを示唆する。熱やトリプシン処理でもMHFの不活化が見られたことから、熱に安定なタンパク質がAI-2の不活化に関与することが示唆された。酵素によりMHFが別の形に変換されることが観察された。したがって、この酵素がAI-2を分解または変換することで不活化することが示唆された。 以前、我々はΔluxS株のバイオフィルム形成が野生株よりも増加するという観察結果から、E. corrodensのバイオフィルム形成がAI-2によって制御されることを報告した。(Azakami et al., J. Biosci. Bioeng., 102, 110-117, 2006) AI-2分子がバイオフィルム形成に直接影響を与えるかどうかを調べるために、ΔluxS株と野生株に精製したAI-2を添加し、静置法によりバイオフィルム形成能を比較した。その結果、E. corrodensのバイオフィルム形成はAI-2の添加のより増加した。次に、両株をフローセルシステムでバイオフィルム形成させ、走査型電子顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡により観察した。ΔluxS株のバイオフィルムでは生菌数の著しい現象が見られ、野生株のものに比べ疎なバイオフィルムであった。このことは、AI-2が成熟なバイオフィルム形成を促進することを示唆した。逆に、共焦点レーザー顕微鏡による観察では、野生株のバイオフィルムはΔluxS株のバイオフィルムよりも成熟しており、時間とともに薄く疎らになっていった。これらの結果は、LuxSがE. corrodensのバイオフィルムの成熟と脱離を促進する可能性を示唆した。
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