研究課題
多くのグラム陰性病原性細菌は、エフェクターと呼ばれる病原因子を宿主細胞中にⅢ型分泌装置を使って注入することが知られている。エフェクターは宿主細胞内の様々な細胞機能を阻害することにより宿主免疫応答を撹乱することで感染に有利な環境を構築することに機能している。しかし、エフェクターの多くは構造を元に機能を推定することが困難な状況にある。青枯病菌は、ナス科植物をはじめとする200種以上もの植物に感染し、枯死させる農業上最も深刻な被害をもたらす植物病原性細菌の一つであり、その宿主域の広さに対応して70種類以上もの多くのエフェクターを有する。我々は、青枯病菌の感染戦略の理解のため、青枯病菌エフェクターの分子機能を明らかにすることを目的として、これまで酵母発現系を用いて青枯病菌エフェクターの機能解析を研究を行ってきた。その結果、RipAYと呼ばれる酵母に増殖阻害を引き起こすエフェクターがレドックス恒常性維持に必須なグルタチオンを分解するγグルタミルシクロトランスフェラーゼ(GGCT)活性を有することを明らかにした。また、興味深いことに大腸菌で発現させたRipAYは、試験管内で全くGGCT活性を示さないが、真核生物型チオレドキシンを添加することより活性化し、極めて高いGGCT活性を有するようになることを見出した。グルタチオンは、植物においては、病原菌感染時の病害抵抗性発現に必須な因子であることから、青枯病菌は感染時にRipAYを宿主細胞内に注入することにより宿主グルタチオンを枯渇させ、結果として自身の感染に有利な環境を構築していることが推測された。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件)
Journal of Biological Chemistory
巻: 291 ページ: 6813-30
10.1074/jbc.M115.678953.