稲わら等の農産廃棄物由来のリグノセルロースはD-グルコースからなるセルロースに加えて、D-キシロースやL-アラビノースなどからなるヘミセルロースを少なからず含有することから、これらのリグノセルロースからバイオエタノールを生産する場合、D-グルコースに加えて、D-キシロースやL-アラビノースも発酵原料となる微生物株を利用することが有効である。本研究で使用している接合菌のMucor circinelloidesやRhizomucor pusillusに加えて、本年度はアルコール飲料スターターから単離した酵母、糸状菌、細菌からエタノール生産性の高い酵母Meyerozyma caribbicaを選択し、各種培養条件でのD-グルコース、D-キシロース、L-アラビノースからのエタノール生産性を検討するとともに、D-キシロースとL-アラビノースの代謝関連酵素について検討を加えた。これらの代謝関連酵素のうち、キシリトールをD-キシルロースに変換するキシリトール脱水素酵素をM. caribbicaの菌体より電気泳動的に単一にまで精製し、その諸性質を明らかにしたところ、本酵素はキシリトールに加えて、L-アラビノースの代謝中間体であるL-アラビトールにも活性を示すユニークな酵素であることが判明し、ペントースからのエタノール発酵が可能なSaccharomyces cerevisiaeの遺伝子組換え体の作製に利用可能であることが示唆された。
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