我々は、糸状菌におけるセルロース系バイオマス分解酵素遺伝子群の発現制御機構を解明することを目的として、セルラーゼ生産性糸状菌Aspergillus aculeatusをモデルに用いて研究を展開した。本課題では、(1) 申請者らが同定した転写制御因子ClbRの相互作用因子の探索とその機能解明、(2) 新たなセルラーゼ遺伝子発現制御因子のスクリーニング・同定・機能解明を目的として設定した。 (1) 我々は、ClbRが42%の相同性を有すClbR2と協調的に転写因子ManR遺伝子の発現を制御することに加えて、新たにYeast Two Hybrid法によりセルラーゼ系酵素遺伝子の発現制御因子がClbRの相互作用因子候補として同定された。まず、ClbRとClbR2の相互作用をin vivoで解明するために、タグ融合ClbRとClbR2の発現を試みたが、これまでに各リコンビナントタンパク質の検出に成功していない。転写因子が不安定であると予想されたため、局在解析の結果からClbRが常に核に局在している事を見出したため、粗核抽出物を調製してリコンビナントClbRの検出法を確立している。また、各転写因子間の相互作用をBimolecular Fluorescence Complementation法も用いて解析する計画である。 (2) 我々が作出したA. aculeatus のT-DNA挿入変異株ライブラリから、セルラーゼ遺伝子の発現制御に関わる因子の欠損候補株を探索し、それら遺伝子の機能を解析した。今年度は、新たにタンパク質リン酸化酵素がセルロース誘導に関わっていることを見出すだけでなく、新たに6候補株を単離した。これまでに4株については変異遺伝子を同定し、その機能を詳細に解析し新たな知見を得てている(未発表データ)。
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