研究課題/領域番号 |
25450112
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
小松 護 北里大学, 感染制御科学府, 講師 (40414057)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Streptomyces avermitilis / secondary metabolite / liner plasmid / conjugation / synthetic biology |
研究実績の概要 |
我々は、エバーメクチンの工業生産菌であるStreptomyces avermitilisの大規模欠失体 (SUKA) が異種微生物由来の二次代謝産物生産のための汎用宿主として利用出来ることを報告してきた。しかしながら、本菌の制限系により、I型ポリケチド化合物の様に、全長100 kbを超える生合成遺伝子群を含むBACクローンの導入効率が極めて低いことが問題であった。そこで、同種ならびに異種間で接合伝達するS. avermitilis由来の線状プラスミド (SAP1: 94,287 bp) を利用した遺伝子導入法を開発した(平成25年度)。SAP1上に、5種の溶原化ファージ(φC31、R4、TG1、φK38-1、φBT1)に対応するS. avermitilis染色体上のattB配列をタンデムに配列した人工遺伝子を導入した。SAP1ベクターを形質転換能力の高いS. lividansに導入した後、組込型BACクローンを形質転換法によりSAP1ベクター上に導入した。得られたS. lividans形質転換体を供与菌としてSUKA株と接合を行った結果、I型ポリケチドをはじめとする種々の二次代謝産物生合成遺伝子群を含むSAP1ベクターをSUKA株に効率よく導入することができた。接合伝達の条件検討の結果、スラント状に試験管内で作製した寒天培地上に、供与菌であるS.lividans形質転換体と受容菌であるS.avermitilis SUKA株の胞子懸濁液を1:10あるいは1:20とした混合比で塗布することによって、効率よくBACクローンを保持するSAP1ベクターが受容菌へ移動することが明らかとなった。現在までに、200 kbを越すBACクローンをSUKA株へ効率よく導入することが可能となった。また、得られた接合体において、導入した各生合成遺伝子に由来する二次代謝産物の生産を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度において、当初の研究計画通り、予定した全ての実験行程ならびにその検証について順調に終えることができた。SAP1上に、5種の溶原化ファージ(φC31、R4、TG1、φK38-1、φBT1)に対応するS. avermitilis染色体上のattB配列をタンデムに配列した人工遺伝子を導入することにより、汎用性の高い線状プラスミドベクター(SAP1ベクター)を構築した。構築したSAP1ベクターを用いて、100 kb以上のBACクローンをS. lividansを供与菌とした接合伝達により、S. avermitilis SUKA株に効率よく導入する事が可能となった。詳細な接合条件を検討した結果、更に高効率で接合体を得られることが出来るようになり、これまでに、200 kbを超えるBACクローンの導入も可能となった。平成26年度におけるこれらの検証により、これまでに困難であった、SUKA株に対して巨大なBACクローンを効率良く導入する事が可能となり、さらに汎用性を増した異種発現システムを構築することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては、開発した遺伝子導入技術を用いることにより、I型ポリケチド合成酵素遺伝子や非リボソーム型ペプチド合成酵素遺伝子を含むBACクローンについて、S. avrmitilis 大規模欠失体を用いた異種発現を行うことにより、安定した物質生産が可能であるかどうか、導入した生合成遺伝子の宿主における安定性なども含めて検証する。また、放線菌は有用修飾酵素類の宝庫であり、二次代謝産物の生産過程での新規化合物が合成される可能性が高い。これまで、SUKA株を宿主とした異種生物由来の二次代謝産物の生産過程で、既知化合物に加え、内在性修飾酵素の触媒による新規化合物が生成していることからも期待できる。新規化合物の生産が確認された場合は、精製ならびに構造解析を行う。また、随時、新たに有用な二次代謝産物生合成遺伝子群についても解析を行う。
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