研究課題/領域番号 |
25450113
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高野 英晃 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (50385994)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 光受容体 / 一般細菌 / ビタミンB12 |
研究概要 |
1)ビタミンB12を光アンテナとするLitRの立体構造決定 サーマス属細菌のLitRのビタミンB12結合ドメインのX線結晶構造を行い、立体構造を決定した。変異蛋白質を用いた機能評価を実施した結果、H177A変異蛋白質はB12との相互作用能を欠損していた。一方、H132A変異はB12との相互作用には関与しないが、光依存的なDNA結合活性に関わることが判明した。 2)シュードモナス属細菌に存在する新しい光センシング機構 MerRファミリーとLOV型光受容体を介した新しい光受容メカニズムを生化学実験による証明を実施するために、組み換え蛋白質の安定した発現系と精製系を確立した。現在、相互作用解析を実施している。 3)TetR型およびMarR型レギュレーを介した光応答機構 これまでにTetRやMarRタイプの光センサーに関する報告は存在しないことから、それらの光アンテナ機能を司る低分子化合物を探索・精製するための実験系を確立した。すなわち、ヒスタグを付加した蛋白質がオリジナルの宿主において本来の活性を有していることを確認した。本系により光アンテナ分子が共精製されることを期待し、蛋白質の精製を進めている。 4)光によって誘発される新規な微生物機能の探索 光が誘発する微生物機能は十分に研究されていないため新規性の高いものが見つかる可能性が高いと考え、表現型を基に探索を実施した。その結果、バチルス属細菌の菌体外粘性物質生産とバイフィルム形成が光によって顕著に抑制されることを見出した。また、放線菌の一種であるGordonia属細菌を対象としたトランスクリプトーム解析を実施し、カロテノイド生合成遺伝子クラスターの転写が光によって顕著に誘導されることを見出した。また、RNAポリメラーゼのシグマ因子の1種が光によって転写レベルが上昇することを見出した。本菌には既知の光センサーはコードされていないことから、新規な光感知機構の存在が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各研究計画は以下の通り確実に進んでいる。サーマス属細菌由来のLitR蛋白質の機能に直接関わる2つの重要なアミノ酸残基を特定することに成功した。シュードモナス属細菌におけるLitRと光センサーの組み換え蛋白質の安定かつ容易な発現および精製条件を決定できたことから、次年度における各種生化学実験が可能となった。また、ヒスタグ付加は光応答性転写調節タンパク質がもつ本来の活性に影響しないことが確認でき、光アンテナ分子を精製できることが予想された。また、Gorodonia属細菌において光誘導性シグマ因子を見出すことに成功した。バチルス属細菌から見出した菌体外粘性物質生産とバイオフィルム形成が光によって顕著に抑制される現象はこれまでに知られていない現象である。
|
今後の研究の推進方策 |
シュードモナス属細菌に存在する新しい光センシング機構については、等温滴定カロリメトリー、超遠心装置、ビアコアを用いて、LitRと光センサー蛋白質の相互作用を詳細に解析する。また、LitRと光センサー蛋白質の結晶構造解析を進め、複合体の立体構造を決定する。その他の光センサー候補蛋白質については、光アンテナ分子の機能をもつリガンドを同定するために、ヒスタグ融合遺伝子の形質転換体より光センサーとリガンドの共精製を試みる。光によって誘発される新規な微生物機能を探索するために、自然環境より光によって誘導されるユニークな現象の探索を継続して実施する。加えて、ゲノム情報に基づいた新規な光センサーの探索も進める。バチルス属細菌の菌体外粘性物質生産の光抑制は大変ユニークな現象であることから、その分子メカニズムを解明する。また、Gorodonia属細菌の光誘導性シグマ因子の遺伝子破壊実験などを通じて、本菌の光誘導性転写メカニズムの解明を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
実験材料として購入したいくつかの品目について、予想より安い価格で購入できるものがあった。そのため余剰分を次年度の消耗品購入に充てたいと考える。 次年度に計画する光センサー遺伝子の研究に用いるDNA精製キット(約5万円)の購入に充てる。当初より予定している次年度予算については、各種細菌由来の光センサー遺伝子およびその蛋白質の遺伝生化学的な研究に必要な消耗品購入に充てる。
|