研究課題
(1) 有機酸輸送系の改変を目的とした有機酸輸送系遺伝子の解析と利用初年度(平成25年度)の検討で、糸状菌Aspergillus nigerにおいてクエン酸生産条件下で8種の有機酸輸送系遺伝子の転写を確認した (論文発表2) 。その中の1つであるミトコンドリア局在型クエン酸輸送体タンパク質(COC)ホモログをコードする遺伝子の機能解析を実施した。COCは酵母においてミトコンドリアと細胞質間の2-オキソグルタル酸-クエン酸の共役輸送を司る輸送体タンパク質であり、そのホモログを遺伝子をA. nigerよりクローニングした。さらに当該遺伝子破壊株を作製し、COC遺伝子破壊が糸状菌においては菌体の増殖にほとんど影響を与えず、その一方でクエン酸生産量の著しい減少を引き起こすこと明らかにした(論文投稿準備中のため詳細省略)。現在、有機酸高生産株の創製を目的として、これまでの研究で得られた糸状菌における有機酸輸送系に関する新規な知見を集大成し、遺伝子工学的な代謝経路の改変を進めている。(2) クエン酸生産糸状菌を宿主とした異種遺伝子の発現による有用有機酸生産糸状菌の作製糸状菌を利用したポリケタイド生産を目的として、A. niger由来III型ポリケタイド合成酵素(PKS)の機能解析を行った。ポリケタイドは、一般にフラボノイドやポリフェノールと呼称される化合物を含む二次代謝産物の一群であり、食品や医薬品またはその前駆体として利用されている。ポリケタイドの炭素骨格は、コエンザイムA(CoA)により活性化された脂肪酸である脂肪酸アシルCoA同士を縮合することにより形成されるが、その反応は生体内においてはPKSが担っている。当研究室が保有するクエン酸生産糸状菌由来のIII型PKSは、既報のそれらとは異なり、マロニル-CoAを開始基質として認識する、短鎖の脂肪酸アシル-CoAを開始基質としてテトラケタイドピロンを合成可能といった新規な特徴を有していることを明らかにした (論文発表3)。
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