研究課題/領域番号 |
25450117
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
江田 志磨 立命館大学, 生命科学部, 助教 (50420005)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 根粒菌 / TolCタンパク質 / 細胞表層構造 |
研究概要 |
グラム陰性細菌の外膜タンパク質 TolCは、抗生物質の排出や菌体外毒素の分泌に関わるチャネルタンパク質である。TolC は病原細菌に特徴的なタンパク質であると思われていたが、グラム陰性細菌に普遍的に存在することが明らかとなり、近年では、抗生物質や毒素の輸送に加えて何らかの重要な生理的機能を担うタンパク質であると考えられている。マメ科植物のアルファルファと共生する根粒菌では、tolC 遺伝子が変異すると細胞膜の健全性が低下し共生不全になる。この原因を明らかにするため、tolC 変異株から復帰変異株の取得を試みた。アルファルファ根粒菌のtolC変異株は、野生株に比べて、浸透圧耐性、界面活性剤耐性、カチオン性抗菌ペプチド耐性などが低い。そこで、tolC 変異株に変異剤処理、またはトランスポゾンによる遺伝子破壊を施し、上記の耐性を指標に選択したところ、それぞれの耐性が個々に復帰した株、同時に複数の耐性が復帰した株が多数得られた。加えて、宿主アルファルファとの共生を指標とした選択においても複数の復帰変異株を得ることができた。次年度以降、これらの復帰変異株の変異部位を同定することにより、TolCの生理的機能と関連の深い遺伝子を見つけることができると考えられる。 tolC 変異株の細胞表層構造についても解析した。菌体細胞の電気泳動移動度および電気浸透流速を測定し、大島のモデル(Oshima H, 1995. Adv. Colloid Interface Sci. 62:189-235)により表層中の固定電化密度、荷電分布、および表層面の柔らかさを見積もった。tolC 変異株ではこれらに違いが認められ、各インデックスの値はリポ多糖変異株のそれに近かった。したがって、リポ多糖の合成量や構造の変化がtolC 変異株の共生不全の一因である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、1. tolC 変異株からの復帰変異株の取得、および、2. tolC 変異株の膜構成要素の解析の2つの実施を計画していた。両項目ともおおむね目標を達成できた。以下に詳細を述べる。 1. 復帰変異株の取得では、3つの変異導入方法(自然突然変異、変異剤による変異誘発、およびトランスポゾンによる遺伝子破壊)と、5つの選択条件(高高浸透圧耐性、活性酸素種耐性、界面活性剤耐性、カチオン性抗菌ペプチド耐性、二価カチオン要求性、共生能力の回復)とを組み合わせることにより、それぞれの耐性が個々に復帰した株、同時に複数の耐性が復帰した株を多数得ることができた。また、共生を指標とした選択においても複数の復帰変異株を得ることができた。本研究では、復帰変異株の取得の可否が初年度の鍵であり、また全体の計画を左右する重要なポイントであると位置づけていた。十分な数の復帰変異株が得られたことにより、目標が達成できたと判断した。 2. 膜構成要素の解析では、膜脂質、リポ多糖、膜タンパク質、表面構造を分析した。薄層クロマトグラフィーを用いた脂質分析により、tolC 変異株の膜脂質成分が野生株とほぼ同じであることを明らかにできた。電気泳動移動度およびガスクロマトグラフィーを用いた分析により、tolC 変異株ではリポ多糖の合成量または構造が変化していることが分かった。膜タンパク質の種類と発現量には、野生株とtolC 変異株の間で顕著な差は認められなかった。以上のように、滞りなく、計画していた項目を解析することができ、野生株とtolC 変異株の膜構造における類似点と相違点が明らかになった。次年度以降の研究において、さらに詳しく調べるべきポイントを絞り込むことができたので、ほぼ目標が達成できたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最近(平成25年度)、大腸菌において、tolC 変異株の生育低下の原因が、鉄キレート分子の分泌異常(ペリプラズムへの過剰蓄積)にあるとの報告がなされた(Vega DE and Young KD, 2013. Mol. Microbiol. 2014. 91:508-521)。当初の計画にはなかったが、アルファルファ根粒菌tolC変異株においても鉄キレート分子の分泌異常が起きているか否か調べる必要が生じた。そこで以下に示す解析を平成26年度以降の計画に追加する。 アルファルファ根粒菌tolC変異株を鉄制限および鉄過剰培地で培養する。鉄制限培地で生育が低下し、鉄過剰培地でそれが回復するならば、アルファルファ根粒菌tolC変異株においても鉄キレート分子の分泌異常が起きている可能性がある。この場合、tolC遺伝子と鉄キレート分子の合成遺伝子の両方を破壊した二重変異株を作製し、鉄制限培地での生育低下が回復するかさらに調べる。 上記以外に計画の変更はなく、当初の計画の通り、1. 復帰変異株の遺伝学的な解析、2. tolC変異株の遺伝子発現の網羅的解析、3. 他の根粒菌および近縁菌のtolC 変異株の作製と解析、および4. 大腸菌 tolC 変異株との比較を進める。
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