理化学研究所筑波事業所構内より採取し、細菌群集解析を実施したササラダニ類を分離源として、細菌の分離と解析を行った。5種のササラダニ(それぞれモンツキダニ科、2種のアミメオニダニ科、フリソデダニ上科、ヘソイレコダニ上科の一種と同定)について、ジルコニアビースによる穏やかな粉砕処理液を寒天培地に塗布し、好気条件下25度で5-9日間培養した。出現コロニー数はササラダニ種間で大きな差が見られ、これは16S rRNA遺伝子配列による群集解析の多様性指標の差異と同様の傾向であった。任意に206コロニーを選択し、16S rRNA遺伝子部分塩基配列を解析したところ、21株が既知の基準株配列(LTPs128)との比較で96%未満の相同性を示した。特にモンツキダニ科及びアミメオニダニ科の検体からは新規性の高いものが比較的多く分離されたが、細菌の多様性が比較的小さかったその他2種のササラダニからは、そのような株は確認されなかった。 分離株のうち、Rhizobialesの6株、Chitinophagaceaeの1株、Cytophagaceaeの1株、Dermacoccaceaeの8株、Alcaligenaceaeの1株は、LTPs128との比較で90-95%の相同性を示し、特に新規性の高い細菌株であることが期待された。その他、Sphingomonas属、Nakamurella属、Microlunatus属、Nocardioides属等の新規な株が確認された。また、モンツキダニ科の検体からは、特定の細菌株との共培養条件下でのみ増殖可能となる新規性の高い細菌株も得られた。本研究で得られた多くの新種候補株の一部はドラフトゲノム解析を実施し、また新規バイオリソースとしてJCMに寄託した。今後ドラフトゲノム配列の解析、分類学的及び生態学的解析を継続し、新規細菌バイオリソースとして公開する予定である。
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