研究課題/領域番号 |
25450121
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
加藤 千明 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, シニアスタッフ (90360750)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 深海適応 / 好圧性細菌 / 圧力 / イソプロプルリンゴ酸脱水素酵素 |
研究概要 |
マリアナ海溝,深度約11,000mの海底サンプルから分離された絶対好圧性細菌、Shewanella benthica DB21 MT-2の生産する、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素(IPMDH、ロイシン生合成系の必須酵素)を精製し、陸上環境由来の近縁菌である、Shewanella oneidensis MR-1のIPMDHと比較した。その結果、好圧菌酵素は、常圧菌酵素と比較して、顕著に高い耐圧性があることが明らかとなった。そこで、こうした、好圧菌酵素の高い圧力耐性は、いかなる構造に起因するのか検討を行った。 好圧菌IPMDHと常圧菌IPMDHは、それぞれ精製後結晶化し、新規に開発された高圧X線結晶構造解析装置により、大気圧下と加圧下との構造の変化を解析した。その結果、IPMDHの活性中心の裏側に位置する部分に、常圧菌酵素では、加圧条件下で3つの水分子が入り込むのに対し、好圧菌酵素ではそうしたことがなかった。このことから、加圧による水分子のこの部位への挿入の有無が、本酵素の耐圧性に密接に関わっていると推定された。ちなみにこの部位のアミノ酸は常圧菌酵素が親水性アミノ酸のSer266であるのに対し、好圧菌酵素ではこれが疎水性アミノ酸のAla266であった。 そこで、常圧菌酵素のこの部位のアミノ酸をSer266→Ala266へと変換した変異酵素(S266A)を作り、その加圧下での活性を測定したところ、この1アミノ酸変異で常圧菌酵素が好圧菌酵素と変わらない耐圧性を持つことが示された。 以上の結果から、好圧菌酵素は常圧菌酵素と比較して、わずか1アミノ酸の違いで加圧下に適応する構造を取り得ることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、変異体酵素の作成と加圧下での活性測定、そして結晶化条件の検討まで行う予定であったが、研究の進捗が順調であったため、高圧X線結晶構造解析まで進むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、得られた変異体酵素を用いて、更に、加圧下での活性の安定性と構造との相関に関して、検討を進める。更に、好熱菌酵素における加圧下での活性と構造との相関性を確認し、同酵素の構造における圧力耐性のメカニズムについて、総合的な知見を得ることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
所属する研究機関に、実験に必要な消耗品との相同品が大量に保管されており、予定していた消耗品の発注の必要がなくなったため。 本研究の成果に関して、追加で、国際学会での発表を行うための経費とした。
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