研究課題
基盤研究(C)
脂肪細胞へ分化する前駆脂肪細胞株のマウス3T3-L1細胞の実験系を中心に研究を行った。特に、異なるライフステージでの脂肪細胞でのシクロオキシゲナーゼ(COX)経路の発現調節機構と反応産物のプロスタグランジン(PG)類の特異な作用に関する研究を実施した。PG類の生成には、常在性のCOX-1と誘導性のCOX-2のような2つの種類のアイソフォームが関与する。しかし、内因性PG類の生合成調節における、COXアイソフォームの特異的な役割は不明のままである。そこで、アンチセンス方向に位置したマウスCOX-1を暗号化するcDNAを組み込んだ哺乳動物の発現ベクターで安定発現したクローン化前駆脂肪細胞を単離することで、培養前駆脂肪細胞での常在性のCOX-1を選択的に抑制することを試みた。その結果、常在性COX-1の転写産物とタンパク質の発現レベルは、アンチセンスCOX-1で形質転換して単離されたクローン化細胞で有意に抑制された。対照的に、誘導型COX-2の発現は、ほとんど影響を受けなかった。アンチセンス方向にCOX-1を安定に発現すると、成熟期での脂肪細胞での脂肪蓄積の有意な促進が誘導され、それは、脂肪細胞特異的な遺伝子のより高い発現レベルに関係していた。さらに、アンチセンスのCOX-1による形質転換細胞では、脂肪細胞形成の促進因子として知られる15-デオキシ-Δ12,14-PGJ2やΔ12-PGJ2のようなJ2シリーズのPG類の生成の促進が認められた。それらの結果より、誘導性のCOX-2は、常在性のCOX-1の発現抑制を補償することにより、成熟期の脂肪細胞形成を促進する内因性PGJ2誘導体の生成に貢献できることが示された。
2: おおむね順調に進展している
今回の研究では、前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への異なるライフステージでのPG類の生合成経路に重要な律速酵素であるCOXの2つのアイソフォームのうち、COX-1を特異的に抑制する実験系を確立できた。これらの研究成果は、複数の国内外での学会での発表や国際的な学術誌に精力的に発表している。
本研究室では、研究計画の課題に関連して、他のPG関連物質の生合成調節機構や代謝産物の同定や定量のための研究を継続している。そのために、個々のPG類に対する特異的な抗体を利用した酵素免疫測定法の開発研究や機器分析法のタンデム型の液体クロマトグラフィー質量分析計によるPG類の解析研究も実施している。従って、当初の研究計画に沿って、異なるライフステージでの脂肪細胞の機能変化におけるアラキドン酸COX経路の発現調節や代謝産物の役割を解析する研究をさらに推進できる状況である。
次年度の実験に必要な試薬類があるので、そのために使用予定。種々の薬品類の購入に使用する。
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Appl. Biochem. Biotechnol.
巻: 171 ページ: 128-144
10.1007/s12010-013-0347-3
https://www.staffsearch.shimane-u.ac.jp/kenkyu/search/detail/975bc27228691c78b9827b5c1a6aa129/research.html