研究課題
プロスタサイクリンとも呼ばれているプロスタグランジン(PG)I2は、アラキドン酸シクロオキシゲナーゼ経路を介して生合成されるが、生体内では、速やかに不活性な6-ケト-PGF1αに変換する。以前の研究で、プロスタサイクリンの安定類縁体が、脂肪細胞の分化誘導過程を促進すると報告されているが、前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への異なるライフステージにおけるどの段階で作用しているのかについては不明である。今回の研究では、内因性PGI2の生成を反映する6-ケト-PGF1αの定量測定のために、本化合物に特異的な高感度の固相化酵素免疫測定法の開発を行った。開発した本免疫測定法で、測定ウエルあたり0.8 pgから7.7 ngの範囲の6-ケト-PGF1αを測定することが可能であった。用いたマウスの抗血清の特異性を評価したところ、PGF1αが1.5%の交差性を示した以外、他のPG類に対する有意な交差性は認められなかった。このようにして開発した酵素免疫測定法を、前駆脂肪細胞株の3T3-L1細胞の培養系に適用して、各ライフステージにおける内因性のPGI2に由来する6-ケト-PGF1αの測定を行った。脂肪細胞の形成における生育期、分化誘導期、そして成熟期での生成量を比較したところ、成熟期後の4-6日後に最も生成量が高いことが確認された。その生成の増加には、PGI2の生合成酵素のPGI合成酵素とPGI2に対する特異的な細胞表面受容体であるIP受容体の遺伝子発現の促進が伴っていた。本研究の結果、脂肪細胞の形成過程におけるPGI2生合成調節の研究に、今回の6-ケト-PGF1αの特異的な酵素免疫測定法が有用であることがわかった。さらに、脂肪細胞の成熟過程には、内因性のPGI2が成熟脂肪細胞の形成促進に貢献しているものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
脂肪細胞に分化誘導できる培養脂肪細胞を用いて研究を継続している。脂肪細胞の成熟期でのプロスタサイクリンとそのアゴニストを用いた作用機構の解析研究と分化誘導期におけるアラキドン酸の特異な作用に関する研究で種々の結果を得ている。今後の研究の進展につながる。
脂肪細胞でのアラキドン酸シクロオキシゲナーゼ経路の生合成経路で生成される内因性の種々のPG類の生合成調節機構をさらに解明する。また、脂肪細胞の異なるライフステージでの外因性のPG類やその前駆体である多価不飽和脂肪酸の作用を解析する。そのために、各PG種に特異的な細胞内シグナル伝達機構の解析やPG類の生成レベルを一斉に解析することを考えている。
現在、研究が継続しており、次年度で細胞培養関係の実験に経費が必要のためである。
薬品類、動物細胞培養関連の実験、遺伝子工学関連実験に使用する計画である。
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Cytotechnology
巻: 66 ページ: 635-646
10.1007/s10616-013-9616-9
https://www.staffsearch.shimane-u.ac.jp/kenkyu/search/detail/975bc27228691c78b9827b5c1a6aa129/research.html