研究課題
前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞へ分化する樹立細胞株のマウス3T3-L1細胞株を用いて、培養系における脂肪細胞の分化誘導や成熟過程における生理活性脂質のプロスタサイクリンとその安定類縁体であるアゴニストやアンタゴニストの作用を検討して、それらの細胞内での作用機構を明らかにしようと試みた。本研究室では、以前に培養脂肪細胞が、PGI合成酵素とプロスタノイドIP受容体の遺伝子発現の正の調節作用により、プロスタサイクリンとも呼ばれるプロスタグランジン(PG) I2を生合成する能力を持つことを示している。今回、外因性のPGI2と、MRE-269やトレプロスチニルのようなIP受容体に対する選択的なアゴニスト類を成熟期に添加すると、COX阻害剤のアスピリンによる脂肪蓄積の阻害を回復した。一方、CAY10441やCAY10449のようなIP受容体に対する選択的なアンタゴニストは、脂肪蓄積を抑制するのに効果的であった。従って、プロスタサイクリンの脂肪細胞形成の促進作用は、脂肪細胞の成熟期に発現されるIP受容体を介するものと考えられる。培養脂肪細胞をPPARγの活性剤であるトログリタゾンとともに、PGI2とMRE-269のいずれかと培養すると、それぞれの化合物そのものよりも脂肪蓄積を付加的に促進することが示された。そのMRE-260とトログリタゾンの相加的な効果は、CAY10441ではなくて、PPARγアンタゴニストのGW9662によりほとんど抑制された。MRE-269はGW9662により抑制された脂肪細胞形成を回復することができなかったが、トログリタゾンの濃度を増加させるとCAY10441の阻害効果を濃度依存的に回復することが見出された。このことは、IP受容体を介する脂肪細胞形成の促進のための下流因子としてのPPARγの重要な役割を示している。
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