研究課題/領域番号 |
25450129
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
澤 嘉弘 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (70127489)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | モノアミンオキシダーゼ / in silico / 分子設計 / L-アスパラギン酸オキシダーゼ |
研究概要 |
本研究は,細菌由来銅含有アミンオキシダーゼをin silicoで分子設計することにより種々のアミン定量に有用なバイオセンサーを開発することを最終目的としている.in silico分子設計とは,リガンドと相互作用するアミノ酸残基部位を抽出し,これを全20種アミノ酸に置換した変異酵素ホモロジーモデル3Dライブラリーの作成と新規リガンドとのドッキング・シミュレーションによるin silicoスクリーニングを行う設計手法である. 本年度は,各種アミンに対する基質特異性の検討を中心に行った. 最初に設計の鋳型として用いるアミンオキシダーゼとして,大腸菌およびA. globiformis由来の酵素(ECAO, AGAO)について,発現状況,精製法等,検討した結果,鋳型としてAGAOが適していると判断した.AGAOは,芳香族アミン(フェネチルアミン,チラミン)や炭素数6, 7の直鎖アルキルアミンを良好な基質とする酵素である.上記一連の in silico 分子設計手順で,AGAOでは,基質認識に重要と思われる疎水性アミノ酸残基が2カ所存在していることがわかった.そこで,これらの単置換酵素を作製し,基質特異性について解析を行ったところ,塩基性アミノ酸残基に置換した変異体で野生型酵素ではほとんど見られないジカルボン酸アミンに対する反応性の上昇が認められた. さらに,FAD型アミノ酸オキシダーゼ(L-アスパラギン酸オキシダーゼ:LAO)を鋳型として用いる可能性についても検討を行った.LAOについては,細菌3種,アーキア1種で,良好な発現が確認されたが,精製の容易な超好熱性アーキア由来LAOを鋳型として用いることにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ予定通り,当初のin silico 分子設計手順を実施し,その結果,二つの重要な疎水性残基を見出すことができた.さらに,これらの単置換体酵素の解析により,当初目標としていたGABAに対する反応性がわずかではあるが認められたので,今後,これらの変異酵素のfine-tuningによる反応性の向上で,バイオセンサーとしての利用に目途をつけることができた.これまでの成果は,2013年度酵素補酵素研究会(1件),第65回生物工学会大会(シンポジウム1件,ポスター2件),第435回ビタミンB研究協議会(1件)で公表している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,上記のAGAO単置換体で得られた成果をイタリアで開催される補酵素国際会議(ICC-04)で発表すると共に,AGAO二重置換変異体の解析を行ってゆく.次に,AGAOと他のアミンオキシダーゼ(ジアミンオキシダーゼ等)との活性中心の比較により,GABA等の短鎖ジカルボン酸アミンの認識に関与するアミノ酸残基の抽出・分子設計・解析を行う.さらに,LAOとAGAO, ECAOの構造比較からGABA in silico 分子設計の可能性についても検討する.LAOからGABAの分子設計が困難である場合は,バイオセンサーとして要望が高いD-アスパラギン酸を基質とするオキシダーゼの設計を行う.これら一連の分子設計で十分な成果が得られれば,チラミン特異的アミンオキシダーゼの創成・安定化に挑戦していく.
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