研究実績の概要 |
本年度は、A. globiformis由来の2種のアミンオキシダーゼ(AO, HAO)について、三次元構造の比較解析から基質特異性の違いを反映するアミノ酸残基を同定し、基質特異性改変用の分子設計を行った。 AOはフェネチルアミン(PEA)やチラミン(TYR)などの芳香族アミンに高い反応性を示すのに対し、HAOはヒスタミン(HIS) に最も高い反応性を示す。両酵素とも炭素数6, 7の直鎖アルキルアミンを良好な基質とするが、HAOの方が直鎖アルキルアミンに対する活性が低く、芳香族アミンに高い反応性を示す。AOとHAOの三次元構造の比較解析を行ったところ、きわめて類似した基質結合ポケットを持ち、1残基(AO:L358, HAO:E378)だけが両者で異なっていた。 In silico分子設計で、L358変異体を9種、E378変異体10種作製し、触媒特性の詳細な解析を行った。HAO型改変体AO L358Eでは、TYR, HISに対してWTよりも高い基質親和性および触媒効率を示した。AO型改変体HAO E378Lでは、TYRに対する活性が最も高くなり、直鎖アルキルアミンに対する活性も上昇し、AOに類似した傾向を示した。また、AO L358Kは、TYR / PER触媒効率7.42と極めて高い触媒効率比を示し、チラミンオキシダーゼ(TOD)という名称が相応しい酵素であった。L358Kは、TYRのバイオセンサー素子として使われている市販TODより、触媒特性や安定性に優れており、きわめて有望である。 その他、P. horikoshii由来のL-アスパラギン酸オキシダーゼ(LAO)の基質改変の分子設計やアントラキノン系色素を効率よく脱色するAnabaena 由来ペルオキシダーゼ(AnaPX)の色素結合部位内に存在するといわれている表面触媒部位残基がY307であることを明らかにした。
|