最終年度は、AOアイソザイムであるヒスタミンオキシダーゼ(HAO)基質認識において重要とされるGlu378の役割を明らかにすることを目的として、Glu378飽和変異体の解析と統合計算化学システムであるMOE in silico 解析の精度について検証を行った。 インバースPCR法を用いた変異導入により、HAO Glu378位における飽和変異導入による網羅的アミノ酸変異体19種を作製し、酵素学的解析を行った。in silico解析では、HAOホモロジーモデルを用いたMOE Residue Scanによるリガンド親和性評価等による動的解析とポケットスペース解析を試みた。 生化学的解析の結果、野生型がHISに対し最も高い反応性を示し、E378Dを除く他の18種変異体ではPEAやTYRが最も高い反応性を示した。予想通り同じ負電荷を持つAspではHISに対する高い反応性を保持しており、触媒効率においても同様だったことから、側鎖カルボキシル基とHISとの静電的相互作用は、HIS認識に対し重要であることを示唆していた。加えて、電荷以外の378位側鎖による反応性の差や、AO型への改変 (E378L) がAOと同じ結果を示さなかった点などより、基質結合ポケット外部からの改変による、基質結合空間の微調整も重要であることをin silico解析で明らかにした。 残念ながらGABA等の生理活性アミンのバイオセンサー酵素を開発することはできなかったが、MOE 2017.08 in silico解析が生化学的解析と高い相関性を示したことから、MOE Residue scanが酵素の分子設計に十分使用できることを明らかにすることができた。 その他、アントラキノン系色素を効率よく脱色するシアノバクテリアDyP型ペルオキシダーゼの表面触媒部位残基がTyr307とAsn336であることを明らかにした。
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