研究課題/領域番号 |
25450131
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
湯浅 恵造 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (70363132)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 情報伝達 |
研究実績の概要 |
CDKファミリーの一つであるPCTK3は、細胞周期制御以外の生理機能を発揮することが推測されているが、未だ生理機能解明には至っていない。昨年度、PCTK3の活性化機構を明らかにするとともに、PCTK3ノックダウンによってHEK293T細胞の形態が変化(細胞伸展)し、アクチン脱重合因子であるコフィリンのSer-3のリン酸化が増加したことから、PCTK3が細胞骨格制御や細胞の運動性に関与する可能性を示した。本年度は、まず、PCTK3の恒常活性化型変異体であるS12D変異体をHEK293T細胞に過剰発現させ、その影響を調べた。S12D変異体の過剰発現によりコフィリンのリン酸化が減少したことから、PCTK3はアクチン動態制御に関わることが確認された。次に、実際にPCTK3が細胞運動に関与するのか否か、創傷治癒アッセイにより評価した。PCTK3ノックダウン細胞では、コントロール細胞と比較して細胞の遊走が促進され、PCTK3はアクチン動態の調節を介して細胞遊走の制御に関わることが示された。さらに、PCTK3がどのような経路でコフィリンのリン酸化・脱リン酸化に関与するのか検討した。PCTK3ノックダウン細胞では、コフィリン同様、ミオシン軽鎖やコフィリンの上流因子であるLIM-domain kinaseのリン酸化が増加した。そこで、これらのリン酸化に関わるいくつかの因子に関して、PCTK3によってリン酸化されるか否かin vitroキナーゼアッセイにより検討した。その結果、PCTK3の基質候補が得られ、現在、真の基質であるか否か検討するとともに、リン酸化の生理的意義について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の成果(PCTK3の活性化機構の解明)を基に、本研究課題の目的のひとつであるPCTK3の生理機能の一端を初めて解明した。PCTK3恒常活性化型変異体を用いた解析とノックダウン解析により、PCTK3の生理機能の一つが細胞遊走の制御であることを明らかにした。これらの成果を、昨年度の成果と合わせて、責任著者としてJ. Biol. Chem. (2014) 289, 18387-18400に発表した。一方、プロテインアレイを用いて、PCTK3の基質探索を試み、いくつかの基質候補を見出したが、全て偽陽性で真の基質同定には至らなかった。しかしながら、コフィリンのリン酸化を制御しているシグナル伝達経路に着目して解析した結果、アクチン動態制御に関わる基質候補を見出すことに成功した。以上のことから、総合的に判断して、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在得ているPCTK3の基質候補に関して、早急に真の基質であるか否か検討する。真の基質であることが確認できたら、リン酸化部位の同定、また、他のCDKファミリーによるリン酸化など詳細な解析を行う。さらに、リン酸化の生理的意義について、アクチン動態の調節および細胞遊走の制御に焦点を当て、解析を進めていく予定である。加えて、ガン細胞においてPCTK3遺伝子の発現変化が認められることから、細胞遊走だけでなく細胞浸潤に関しても解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題を進めていくうえで、リン酸化部位特異的抗体は必要不可欠であるが、リン酸化抗体が市販されていない場合、多額の費用をかけ、作製する必要がある。しかしながら、上記の通り、PCTK3の基質同定に関してやや遅れが生じており、リン酸化部位の同定には至らず、リン酸化抗体の作製が必要か否か判断できなかった。現在、見出している基質候補のリン酸化抗体は市販されておらず、リン酸化部位特異的抗体を作製する必要があるため、本年度の研究費の一部を次年度へ繰り越し、抗体作製に利用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、見出している基質候補のリン酸化部位特異的抗体の作製に利用する予定である。
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