研究課題/領域番号 |
25450135
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
阪本 龍司 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (10275282)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオマス / 糖質分解酵素 / ペクチン / ヘミセルロース / オリゴ糖 / プレバイオティクス / 抗炎症作用 / 免疫賦活作用 |
研究実績の概要 |
食品加工副産物中に多量に含まれるペクチンおよびヘミセルロースは多様な糖鎖構造を持つことから、構成糖や結合様式の異なる様々なオリゴ糖の生産原料となり得る。これまでに植物由来オリゴ糖の機能性については数多くの報告例があるが、ほとんどの研究は様々なオリゴ糖の混合物で評価されており、構造を特定した純粋なオリゴ糖での研究例は少ない。本研究では構造既知のオリゴ糖を調製し、それらが有する機能性を網羅的に評価することで、食品バイオマスの高度利用化の可能性を検討することを目的としている。 本研究グループ所有の種々の糖質分解酵素を用いてペクチンおよびヘミセルロースを分解し、19種のオリゴ糖を調製した。各オリゴ糖についてヒト腸内細菌を用いた資化性試験を行ったところ、ガラクトオリゴ糖やアラビノオリゴ糖、キシロオリゴ糖に善玉菌選択増殖活性が認められた。次にこれらのオリゴ糖に焦点を絞り、成人の便を用いた混合培養系でのオリゴ糖添加による優占菌種変化をリアルタイム-PCRにより分析した。その結果、アラビノオリゴ糖とキシロオリゴ糖に良好なプレバイオティクス作用が認められた。次にマウスマクロファージ様細胞を用いて免疫賦活作用および抗炎症作用を検討した。各種オリゴ糖で細胞を処理した場合に産生されるNO量を指標に評価したところ、メチルエステル化された不飽和ガラクチュロン酸(ΔGalA)オリゴ糖に免疫賦活活性が認められた。一方、抗炎症作用についてはフリーなΔGalAオリゴ糖に最も強いNO産生抑制効果が確認された。さらに、アンジオテンシン変換酵素阻害活性を評価したところ、フリーなGalAオリゴ糖に本活性が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終年度までに予定していた機能性評価項目については概ね終了したので、来年度はさらに評価項目を広げる。当初の研究計画においては、初年度に食品加工副産物を原料として、様々なタイプのオリゴ糖を獲得する予定であったが、化学構造が均一なオリゴ糖を大量に獲得することが困難であり、現在は市販細胞壁多糖を基質として用いている。最終年度となる平成27年度では、これまでの研究結果より有用性の認められたオリゴ糖に焦点を絞り、それらの効率的な生産法の開発を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られたオリゴ糖の機能性評価を引き続き行う。次年度の評価項目としてはガン細胞のアポトーシス誘導作用と肥満細胞を用いたアレルギー抑制作用を新たに行う予定である。また、本年度の研究において機能性が認められた免疫賦活活性や抗炎症活性については、それらの作用メカニズムを分子レベルで解析するとともに、より強力な活性を有する関連オリゴ糖を調製したいと考えている。さらには有用性が認められたオリゴ糖に関しては、バイオマスからの効率的な回収方法を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画において、本年度に恒温振盪機の購入を予定していたが、学内共通機器を使用することで対応できたため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、老朽化の進んでいる備品購入に充てる予定である。
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