研究課題
ハブ毒の主要なタンパク質であるホスホリパーゼA2(PLA2)アイソザイム(5~6種類)のうち、本研究では、主に幼蛇(3歳未満)毒特異的に顕著に発現するPLA2(pgPLA1b/2b)に着目し、構造・機能及び遺伝子発現制御に関する研究を行った。構造と機能研究については、酵母(pichia)を用いたpgPLA1b/2bの発現系の構築を行った。培養上清に全長タンパク質を発現誘導することができたが、単一標品への精製は、他のPLA2アイソザイムと異なり難航した。試行錯誤の末、N末端から10番目のLysで断片化されたタンパク質の上清中の混在が原因の一つと考えられたため、本年度は、Alaに置換した変異体(K10A)および精製の効率化を考慮してN末端とC末端にタグを付加した全長タンパク質の発現系の構築を行った。現在、生理機能を探索中である。分子構造解析ソフト(MOE)を用いた分子モデリングの結果、pgPLA1b/2bは、他のアイソザイムと較べて、分子表面に疎水性アミノ酸を有する特異な構造をもつことが示唆された。遺伝子発現制御機構については、これまでに、pgPLA1b/2bのみ、0歳、1歳と年齢と共に発現量が減少し、2歳でほぼ発現抑制されていることを明らかとした(他のアイソザイムは年齢に無関係に恒常的に発現)。本年度は、その分子機構解明のため、DNAのメチル化解析を行った。成蛇と幼蛇の毒腺からゲノムDNAを抽出し、バイサルファイト法により複数のPLA2遺伝子を対象に行った。pgPLA1b/2b遺伝子プロモーターの上流330 bpの幼蛇のメチル化CGは42%、成蛇では58%という予備的結果となり、幼蛇ではややメチル化が低下している傾向がみられた。今後、メチル化解析に用いる個体年齢を精査して解析すると共に、miRNAの関与など他のエピジェネティックな制御機構の可能性も考慮して研究を進める。
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Milsil
巻: 9 ページ: 14-16