研究実績の概要 |
昨年度にデザインした変異体酵素を発現,精製し,特性解析を行った.サブサイト+3NRに位置するキシロースと疎水的に相互作用していると予測されたアミノ酸Trp270の変異体(W270A, W270Y, W270F)では,PNP-アラビノフラノシド(PNP-α-L-Araf)に対する活性が顕著に低下したが,アラビノキシランに対する活性大きく低下しなかった.サブサイト+1に位置するキシロースと疎水相互作用していると考えられるアミノ酸、Tyr461の変異体(Y461A, Y461F, Y461W)についても同様にPNP-α-L-Arafに対する活性が顕著に低下したが,アラビノキシランに対する活性大きく低下しなかった.Asn462-Oδ1原子はサブサイト+2NR位xyloseのO3原子と水素結合しているアミノ酸である.N462の変異体N462A, N462Qでは,他の変異体(Y461, W270)とは異なり,PNP-α-L-Arafに対する活性の減少はみられなかったが,アラビノキシランを基質として用いた場合には,基質との親和力が大きく低下し,活性の減少が観察された.そこで,GH10キシラナーゼの分解物であるA1X2とA1X3を基質として特性を解析したところ,A1X2を基質として使用した場合,WTと変異体のkcat/Km値に大きな変化は見られなかったがA1X3を基質とした場合には,変異体のkcat/KmはWTの値の約1/3と低い値を示し,アミノ酸の変異によって活性が大きく低下していた.これらの結果からGH62アラビノフラノシダーゼの基質特異性は基質結合クレフトにおけるキシラン主鎖との結合が大きく関与し,基質の選択性やキシラン側鎖に対する選択性を決定していると考えられた.
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