研究課題/領域番号 |
25450145
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
今野 博行 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (50325247)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環状デプシペプチド / 異常アミノ酸 / CCR5阻害剤 / 細胞毒性 / マクロラクトン化反応 / カリペルチン / ホモフィミン / 固相合成法 |
研究実績の概要 |
研究計画に従い、カリペルチンBの環化効率の改善ならにびにその誘導体化を検討した。その結果、従来は難しいとされてきたデプシ結合部位での環化に対しカップリング剤としてDIPC/DMAPを用いたところ高収率で反応が進行することを見出した。またそのアナログ体の合成においては得られるコンフォメーションに依存した結果を示すこととなり、その配列による最適環化部位が存在することがわかった。以上から様々なカリペルチンB誘導体を得ることに成功した。一方で、カリペルチン類にはβMeOTyr残基が存在することで総収率の低下が問題であった。そのため、新たに同等の生物活性を有するホモフォミンBの合成にも取り組んだ。今回は環状部の合成研究を行い、まず異常アミノ酸であるβMeOThrならびにAHDHの立体制御下での合成を行った。次にFmoc-固相合成法によりペプチド鎖の伸長を行い、得られた直鎖ペプチドを用いて環化を検討した。その結果、デプシ結合での環化は困難を極めたものの、マクロラクタム化に成功し効率的な合成法を開発することができた。以上、2つの天然環状デプシペプチドの環状部合成に成功し、さらに鎖状部の合成を検討する予定である。 次に合成した環状デプシペプチドの細胞毒性試験を行った。用いた細胞はHela cell lineであり、生細胞測定試験MTT法によって評価した。その結果、今回合成した環状デプシペプチドならびに直鎖ペプチドにはその毒性が全く観察されなかった。この結果は今後のCCR5阻害(抗HIV剤の重要な標的部位)実験に有力な知見を与えることになった。 さらにCCR5阻害実験に向けた評価系の構築のため、新規に蛍光プローブ合成を行った。TAK779の誘導体化に成功し、今後蛍光標識化、細胞毒性などの評価を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環状デプシペプチド類の合成法が確立できたことは大きい。また細胞毒性試験で文献と異なる結果が得られたことは驚きと同時に朗報となった。今後の大きな知見となり、研究は加速度的に進展するものと確信している。 私たちが目指すCCR5阻害剤は細胞毒性が低く、なおかつCCR5に強力に結合することが条件である。膜蛋白質であるCCR5を発現、評価系として扱うためには脂質二重膜が必要であり、生細胞を用いた実験が理想である。そのため天然物がもつ細胞毒性を低下させるための構造活性相関も重要な課題となる。今回、その点を解決できた事は大きな前進である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通りであり概ね順調ではある。最終年度は蛍光プローブの合成と評価に全力を尽くす予定である。評価したい環状デプシペプチドの入手にはめどがついており、また文献の報告と異なり細胞毒性がほとんど見られないことは朗報であった。今後も化学合成と細胞実験を中心とした評価系を両輪に研究を押し進める。 HEK293/CCR5細胞を用いた実験にとりかかる段階にあるが、簡便評価系を構築しつつ、環状ペプチド入手法、蛍光プローブの最適化など、化学合成を基盤とした戦略に変更はない。継続した方法でCCR5阻害様式の解明を目指したい。
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