研究課題/領域番号 |
25450146
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
西田 芳弘 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (80183896)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイコプラズマ / 肺炎マイコプラズマ / 糖脂質 / 細胞膜 / NMR解析 / 立体配座 / 脂質抗原 / リン脂質 |
研究概要 |
水溶性糖脂質抗原の化学合成と三次元構造解析:これまで、肺炎マイコプラズマの脂質抗原としてGGL(C16)に着目した研究を行ってきたが、水や有機溶媒中で自己集合化して巨大化分子となるため、単分子状態での立体構造や機能の解析が困難であった。そこで、水に溶けるGGLアナローグ分子として、脂肪酸部位にアセチル基を導入したGGL(Ac) を新たに分子設計した。水溶性GGLの化学合成は、既に報告している天然物GGL(C16)の合成法を適用して行なうことができた。合成したGGL(Ac) は、水のほか、メタノールなどの各種有機溶媒に可溶であり、さらに、結晶化させて、純粋な化合物として得ることができた。この化合物に対して、溶媒を変えてスペクトル解析(NMR)を行った。その結果、GGLの三次元構造とその動的挙動は溶媒によって大きく変動し、細胞膜リン脂質とは明らかに異なることが判明した。一般に、リン脂質と同じ脂質を持つグリセロ型糖脂質は、細胞膜リン脂質に似た動的挙動をとり、細胞膜全体に分散していると考えられてきた。しかし、マイコプラズマGGLは、ガングリオシド糖脂質と同様、細胞膜中で孤立した(相分離)マイクロドメイン(当該分野では、ラフトと呼ばれている)を形成する可能性が強く示唆された。GGLは、マイクロドメインを形成して、細胞膜に「脂溶性分子」、例えば、脂肪酸などを通過させる「穴」を形成すると考えられる。一見、何気ない分子構造を持つGGLであるが、生理条件下で、思いも拠らない分子集合体構造を提示する可能性がある。マイコプラズマにとって、GGLは、ホスト細胞の脂肪酸を取り込むドメインとして機能する一方で、ホストの免疫細胞を刺激して炎症を引き起こす原因物質であると考えられる (2013年6月、国際複合糖質学会で発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイコプラズマの特異抗原GGLの三次元構造を明らかにするため、各種溶媒に可溶な新規糖脂質を分子設計して、実際に化学合成と解析を実施した。化学合成と機能解析を中心とする研究は計画通りに進行している。その中で、当初の予想に反して、マイコプラズマ糖脂質GGLは細胞膜表面でマイクロドメインを形成する可能性が強く示唆された。今後、この結果を詳しく検証することで、これまで不明とされてきたグリセロ型糖脂質の生物機能に関して、極めて重要な結論を導くことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マイコプラズマ肺炎の診断に用いられる天然型GGL(C16、C18)の化学合成は多段階の反応経路を必要とするなど、多くの課題が残されている。将来の永きにわたってマイコプラズマ肺炎の課題に取り組んで解決をはかるには、より簡単な化学構造を持った糖脂質アナローグの開発が必要である。平成26年度は、GGLの脂質部位をコレステーロールに置換した新規化合物の化学合成と機能評価に取り組む。コレステロールに置換することで、化学合成が一段と容易となり、ワクチン開発にむけた大量供給が可能になると考える。また、25年度の研究において、当初の予想に反して、マイコプラズマ糖脂質GGLは細胞膜表面でマイクロドメインを形成する可能性が強く示唆された。平成26年度は、この結果を詳しく検証して、これまで不明とされてきたグリセロ型糖脂質の生物機能に関して、明快な結論を導き出したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入した試薬(有機溶剤)の価格が、特別価格となり予想外に安く購入可能になったため、上記残額が生じてしまった。 差額分は、必要な試薬類の購入にあてる。今後は残額が多くならないよう試薬類の購入を計画的に行う。
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