研究実績の概要 |
(1) 線状レプリコンの塩基配列解析に基づいたゲノム構造に関する研究 IlluminaおよびPacBio次世代シークエンサーによるS. rochei染色体の塩基配列解析を行い、全長が8.36 Mbであること、さらに二次代謝生合成遺伝子クラスターは33個存在していることを明らかにした。また、ゲノムの線状構造維持におけるプラスミドの関与を明らかにした。 (2) 制御遺伝子破壊株から取得したアゾキシアルケン化合物の生合成起源 我々は「シグナル分子制御系」「主要二次代謝生合成」の人為的改変により三重変異株を取得し、この株からアゾキシアルケン化合物KA57-Aを獲得した。本化合物 KA57-A ([M+Na]+=239) は特徴的な構造を有しており、アゾ結合の形成機構や生合成起源など興味深い点が多い。 そこで標識化合物の取り込み実験による生合成起源の探索を行った。標識酢酸の取り込み実験により、cis-1-ヘキセニル基 (C1'-C6') は脂肪酸由来であり、C-1位は酢酸の2位炭素由来であることが示唆された。一方、C2-C4 位はアラニン由来と考えられたが、[3-13C]アラニンのC-4位への取り込みが認められなかった。そこで[2,3,3-2H3]DL-serineを添加したところ、KA57-AのH-4位にのみ重水素の取り込みが認められた。また[1,1-D2]1-hexylamineを添加し、常法に従って精製したところ、KA57-Aの他に分離困難な夾雑物が認められ([M+Na]+=243)、分子式はC10H20D2N2O3と示唆された。これは[1',1'-2H2]1',2'-dihydro-KA57-Aに相当しており、2H-NMRにおける後者の高磁場シグナルは本化合物に対応すると考えられる。重水素標識ヘキシルアミン添加時の夾雑物の蓄積は、KA57-A生合成における1',2'-不飽和化がアゾキシ結合形成後に生じることを意味している。
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