研究課題/領域番号 |
25450158
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
近藤 陽一 関東学院大学, 理工学部, 講師 (00391954)
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研究分担者 |
光田 展隆 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (80450667)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 転写因子 / Py-Imポリアミド / シロイヌナズナ / CRES-T |
研究実績の概要 |
本研究ではDNA配列を任意に選択して結合出来るPy-Imポリアミドを利用し、遺伝子組換えと同等かつ遺伝しない有用な形質を植物にもたらす化合物の合成システムの開発を目指している。平成26年度では、合成した化合物が、細胞内で標的配列に結合するかどうか評価を行う系の構築と、この系を使って実際に合成したPy-Imポリアミドの評価を行った。評価系は酵母のワンハイブリッドシステムを利用した系である。この系ではPy-Imポリアミドが結合する標的配列に結合する転写因子の活性によりレポーター遺伝子の発現が促進され、Py-Imポリアミドが標的配列に結合することにより、この転写因子の結合を阻害することが期待される。これをレポーター遺伝子の活性の変化で確認し、Py-Imポリアミドの標的配列への結合活性を評価することが可能であると考えられる。本評価系で用いたレポーター遺伝子は、抗真菌抗生物質オーレオバシジンA(AbA)を分解する酵素をコードする遺伝子である。当該の標的配列に結合するように合成したPy-Imポリアミドをある一定濃度以上加えた培地上で、評価系を組み込んだ組換え酵母を生育させたところ、加えていない培地で生育させた場合と比較して、AbAに対する耐性が極端に減少した。この結果は期待通り合成したPy-Imポリアミドが、標的配列に結合したことを示唆している。 また明確な表現型を示すシロイヌナズナのCRES-T系統を利用し、Py-Imポリアミドの添加がCRES-T系統と同一の表現型を誘導する可能性を検討するため、このCRES-T系統中のキメラタンパク質が結合する配列をChipシークエンシング法により単離することも目指している。平成26年度では、Chipシークエンシングを行うためのタグ(GFPタンパク質)とキメラタンパク質の融合タンパク質の過剰発現体の作出に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、平成26年度内に合成したPy-Imポリアミドの効果について、植物で確認する予定であった。しかしながら酵母のワンハイブリッド系を利用した評価系を用いて、当初予想していた通りのPy-Imポリアミドの効果を確認することが出来たが、当初予定であった植物でその効果を確認する段階までは至らなかった。この原因はPy-Imポリアミドの合成に予想以上に手間取り、時間がかかっただけではなく、合成量も少なかったことである。これについては標的配列を絞るなどして、時間の短縮や合成量の確保に現在も務めているところである。 また平成26年度以内にChipシークエンシング解析による調節配列の決定が為される予定であったが、サンプルに用いる転写因子とGFPとの融合タンパク質が過剰発現する系統の作製に手間取ったため、平成27年度に当該の実験を行うこととした。この過剰発現系統は既に作出が完了したことが確認できたため、Chipシークエンシング用の予算を平成27年度に残して、次年度に実験する対応を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では、合成したPy-Imポリアミドについて、効果を及ぼすおおまかな濃度を評価系を用いて決定することが出来た。そこで平成27年度では、この濃度の化合物が植物に及ぼす影響について解析を行っていく予定である。具体的には化合物を添加した後に、期待通りの表現型を引き起こすかどうか確認を行う。またターゲットになる遺伝子の発現レベルも、転写産物の量を確認することで、化合物が遺伝子の発現レベルを制御しているか解析を行っていく。 またChipシークエンシングによる、過剰発現することにより有用形質を引き起こすキメラタンパク質の新規調節配列の単離については、キメラタンパク質とGFPとの融合タンパク質過剰発現体が作出出来たため、この過剰発現体を用いてChipシークエンシング解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度内に合成したPy-Imポリアミドの評価を済ませることが出来たが、Chipシークエンシングに関する実験を行うことが出来ていない。このためChipシークエンシング解析に関わる予算の未消化が生じている。この解析は研究分担者の研究機関で行う実験であり、平成26年度までに生じた未使用額の全てが、この研究機関で使用する予定であった予算である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度以内にChipシークエンシング解析に供する転写因子とGFPとの融合タンパク質が過剰発現する系統の作製に成功した。そのため平成27年度には当該の実験を行うことが出来る。未使用の予算は、この実験のために使用される。
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