研究課題/領域番号 |
25450159
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
比良 徹 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (10396301)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | GLP-1 / 食事誘導性肥満 |
研究概要 |
GLP-1は、抗糖尿病作用を持つ消化管ホルモンとして近年注目されているが、食事誘導性の耐糖能異常や肥満に おけるGLP-1産生・分泌の変動については明らかではない。初年度において、肥満誘導食として高脂肪かつ高ショ糖食を用い、これの摂取によりどの程度の期間で、耐糖能 異常、肥満が生じるかを検討した。 耐糖能異常、肥満を強く誘導する高脂肪+高ショ糖食を正常ラットに摂取させ、8週間の試験期間中に定期的に食事負荷試験(耐糖能試験)を行い、食後の血糖、インスリン、GLP-1の変動、さらにアセトアミノフェン法により胃排出速度を測定した。 その結果、試験開始1週目から高脂肪+高ショ糖食群において普通食群に比べ、食後血糖応答が高まり、2週目においては食後インスリン分泌も高まる結果となった。その後空腹時血糖も高脂肪+高ショ糖食群で高まり、耐糖能障害は試験終了時まで持続した。食後のGLP-1分泌については試験期間後半において高脂肪+高ショ糖食群において高まる結果となり、GLP-1の分泌不全は観察されなかった。また、胃排出速度も試験期間後半において、高脂肪+高ショ糖食群で低下する結果となった。 これらの結果から、高脂肪+高ショ糖食摂取により早期において食後血糖応答の上昇、即ち耐糖能異常が生じること、その後にGLP-1分泌応答の増進が起きることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、食事誘導性肥満および耐糖能異常の発症過程におけるGLP-1の分泌、産生の変化を明らかにすることであり、肥満誘導食の長期摂取の過程において、経時的に食後血糖、GLP-1分泌応答を観察することで、これらの変化が時間差を持って生じることを見いだした。その点において、おおむね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
肥満誘導食摂取により、消化管においてどのような変化が生じているのかを調べるため、採取した消化管粘膜組織サンプルを用い、網羅的遺伝子発現解析(トランスクリプトーム)を行う。トランスクリプトーム解析で得られた情報を基に、定量PCRにより遺伝子発現の変動を確認する。 肥満誘導食(高脂肪+高ショ糖)において、脂肪、ショ糖どちらの寄与が大きいのかを、高脂肪食および高ショ糖食を用いて比較検討する。 また、研究計画に即して、GLP-1あるいはGLP-1受容体作動薬の投与により、耐糖能異常・肥満を予防できるか、GLP-1の作用を抑制するGLP-1受容体アンタゴニストにより、耐糖能異常・肥満が亢進するのか、さらには耐糖能異常・肥満を抑制できる食事因子の探索、検討を行い、この際のGLP-1の変動をこれまでと同様に解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年3月に、網羅的遺伝子発現解析のためサンプルを調整、委託解析に供したが、解析に1ヶ月程度の時間を要することから、解析結果の受け取り(納品)が平成26年度となり、次年度使用額が生じた。 委託解析結果の納品後に、委託解析費用を平成25年度分より支出し、平成26年度分は当初の計画通りに使用する。
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