研究実績の概要 |
動脈硬化は、動脈壁における脂質の蓄積によって起こる慢性炎症性疾患であり、過剰に惹起される炎症の抑制が予防と治療に重要である。昨年度までに、ガーリック香気成分diallyl trisulfifr (DATS)などの食品機能性成分が生体内の標的タンパク質に作用し生理活性を発揮すること、細胞内GSH量を変化させることを明らかにした。そこで、ガーリック以外の食品機能性成分について、DATSでじゅうぶんに効果が見られる添加濃度・添加時間で同様の検討を行った。 ワサビ由来6-(methylsulfinyl)hexyl isothiocyanate (6-MITC), ブロッコリー由来Sulforaphane, ショウガ由来6-Shogaolにおいて、DATSの標的分子候補として同定した4つのタンパク質へのジスルフィド結合変換が起こるか調べたところ、これらの食品機能性成分の処理では、Controlと大きな違いがないか、弱かった。しかし、本実験では同定に至らなかったが、Sulforaphaneまたは6-Shogaol処理でジスルフィド結合変化を起こす別のタンパク質が観察された。これらの食品機能性成分の添加濃度は、解毒酵素誘導作用やアポトーシス誘導作用などの他の生理活性は観察できることから、食品機能性成分ごとに生理活性の有無と標的分子の違いが示唆された。 今後、LC-MS/MSを使用して未同定のタンパク質の解析を進めるとともに、タンパク質発現量の検討や、動物試験を行い、食品成分がどのように炎症抑制に作用するか定量的な解析を続ける必要があると考える。
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