研究課題/領域番号 |
25450166
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 美里 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (20456586)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脂肪肝 / 候補遺伝子 / 高脂肪食 / ノックアウト |
研究実績の概要 |
脂肪肝モデルマウスSMXA-5は高脂肪食の摂取により脂肪肝を呈する。このモデルの脂肪肝感受性を決定する責任遺伝子を同定するために研究に進めている。遺伝解析により、マウス第12番染色体上の高脂肪食誘導性脂肪肝感受性遺伝子座Fl1saを同定して、その領域の候補遺伝子としてIah1を抽出した。しかし、Iah1遺伝子の哺乳動物における機能についての報告は存在せず、機能未知な遺伝子であった。今年度は、①昨年度作製した候補遺伝子Iah1の全身ノックアウトマウスの機能解析に着手した。同時に肝臓特異的なIah1のノックアウトマウスの作製を進めた。また、②Iah1遺伝子の発現調節機構を解明するためにプロモーター領域のルシフェラーゼアッセイを行った。 ①Iah1遺伝子のノックアウトマウスにおける脂肪肝形成の検証 (in vivo) 昨年度、loxP配列を有するIah1ターゲッティングマウスと全身でCreを発現するマウスを交配して、全身Iah1ノックアウトマウスの作製に成功した。このマウスは腎臓、肝臓、肺、小腸でのIah1タンパク質発現が欠損している。今年度は、このマウスを高脂肪食で12週間飼育して、血中脂質と肝臓脂質の測定用にサンプルの採取を行った。肝臓特異的なIah1ノックアウトマウスも作製にも取り組んだ。 ②Iah1遺伝子転写調節領域の同定 (in vitro) Iah1発現量の低いA/Jマウスにおいて、Iah1遺伝子の上流に約400bpの挿入配列を発見した。そこで、この挿入変異を含む転写開始点の約900bp上流のプロモーター活性をルシフェラーゼアッセイで確認したが、この領域の変異は転写には影響しなかった。そのため、Iah1の転写調節にはさらに上流の変異が関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
①Iah1遺伝子のノックアウトマウスにおける脂肪肝形成の検証 (in vivo) 今までにloxP配列を有するIah1ターゲッティングマウスと全身でCreを発現するマウスを交配して、全身Iah1ノックアウトマウスの作製に成功した。このノックアウトマウスの表現型解析には、雄、雌の野生型、ヘテロノックアウト、ホモノックアウトの6群を用いるために、ヘテロの雌雄個体を交配した。得られた各遺伝子型を12週間高脂肪食で飼育し、血中脂質、肝臓脂質測定用のサンプルを採取した。しかし、ヘテロ同士の交配の繁殖が予想していたよりも悪かったため、今年度中に解析に充分な個体数を得ることが出来なかった。そのため、今年度までに予定していた実験に遅れが生じ、本研究期間を1年延長して平成28年度にIah1遺伝子と脂肪肝形成との関係性を明らかにすることにした。全身でのIah1遺伝子欠損の場合、肝外組織におけるIah1遺伝子が2次的に肝臓に作用して肝臓脂質蓄積に影響を及ぼしている可能性がある。そこで肝臓特異的ノックアウトマウスについても作製を進めており、こちらも平成28年度に表現型解析を行う予定である。 ②Iah1遺伝子転写調節領域の同定 (in vitro) Iah1遺伝子の転写開始点-900bpの領域にA/Jマウスでは約400bpの挿入配列、約120bpの欠失配列を同定した。この2種の大規模な変異について、レシフェラーゼアッセイで転写活性能を評価し、これらがA/JマウスのIah1発現量低下に関与する可能性が低いことを明らかにすることが出来た。しかし、Iah1の発現量の低下のメカニズムは未解明である。
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今後の研究の推進方策 |
①Iah1遺伝子のノックアウトマウスにおける脂肪肝形成の検証 (in vivo) 全身Iah1ノックアウトマウスの実験では、ヘテロノックアウトマウスの雌雄を交配して、野生型、ヘテロノックアウト、ホモノックアウトの3つの遺伝子型を1:2:1の割合で得た。すなわちホモノックアウトの個体は25%の確率で得られるが、雄雌を分けて解析するため、雄のノックアウトマウスはさらに半分の12.5%、すなわち8匹に一匹得られる。しかし、産仔数が平均6匹であるため、一度の出産でホモノックアウト個体が得られないこともある。その上、ヘテロ同士の繁殖が平成27年度は低下していたため、平成28年度はヘテロの雌雄を今までの倍の数確保し、得られたヘテロ同士の交配を2倍にすることで実験に用いる個体数を確保する。得られた個体は随時実験に用いて、各遺伝子型で8匹を雌雄で確保して脂肪肝とIah1遺伝子との関連をin vivoのレベルで明らかにする。そのため、肝臓特異的Iah1ノックアウトマウスの実験に用いる個体についても、同様に解析に必要な個体数を得られるように、交配コロニーを拡大する。そして、全身ノックアウトマウスとの表現型比較を行う。 ①Iah1遺伝子転写調節領域の同定 (in vitro) 平成27年度までにIah1遺伝子転写開始点の上流900bpまでの領域の欠失と挿入の変異が転写調節に大きな影響を与えないことが示唆された。そのため、来年度は、900pよりもさらに上流に変異があると推察し、ゲノムシークエンシングを行う。そこから得られた変異箇所をルシフェラーゼベクターに挿入し、プロモーターアッセイによりSM/JとA/Jとの間の配列変異によるIah1遺伝子の転写レベルの調節との因果関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
全身のIah1ノックアウトマウスおよび肝臓特異的Iah1ノックアウトマウスのいずれも、平成27年度の繁殖が予想していたよりも悪く、実験に必要な個体数を確保することが出来なかったため、平成28年度に期間延長手続きをとったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度にマウスの繁殖不良から実施が遅れた実験について平成28年度は推進する。マウスの飼育繁殖に必要な飼料代や動物飼育代、肝臓の脂質分析および遺伝子発現量解析に必要な試薬類に主に支出する予定である。
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