研究課題
我々が日常的に摂取している一部の食品に多種多様な疑似ビタミンB12(B12)が多量に含まれていることを明らかにした.しかし,疑似B12の生体に及ぼす影響や細胞内代謝については不明であり,日常的に疑似B12を摂取することがB12の吸収を妨げ,細胞内でB12の代謝系を阻害することになれば,B12欠乏症に基づく疾患(神経障害)の発症が危惧される.そこで,食品に含まれる疑似B12を網羅的に分析すると共に多種多様な疑似B12が生体に及ぼす影響を精密に解析することが本研究の目的である.平成26年度は平成25年度に続き,我が国の主要なB12供給源である食用貝類や食用藻類に加え,多種類の加工食品に含まれるB12化合物をLC/ESI-MS/MS法を用いて疑似B12の存在量や分子種を検討した.世界各地で食されている多種類の食用紅藻類のB12化合物を分析した結果,B12が主要なコリノイド化合物であったが,疑似B12を含む紅藻類があることが明らかとなった.また,栄養補助食品として流通している緑藻類クロレラ19種類を分析した結果,B12含量の高いクロレラの一部に疑似B12や未同定のB12様化合物が存在することが明らかとなった.乳加工品のチーズ30種類に含まれるB12化合物を分析した結果,ほとんどのチーズでB12が検出されたが,一部の青カビチーズで未同定のB12化合物が含まれていた.また,牡蠣の加工品である干し牡蠣やオイスターソースならびに卵の加工品であるピータンについてもB12化化合物を精密に同定した.新規なB12酵素の拮抗阻害剤を開発して,哺乳動物由来の培養細胞をB12欠乏状態にさせることが可能となった.
3: やや遅れている
食品中の疑似ビタミンB12(B12)類の分布と含有量については,我が国における主要なB12の供給源である魚介類・乳類・卵類において,ほぼ分析が完了した.一方,疑似B12類の調製法については,6種類の疑似B12のなかで3種類は大量調製法の条件を確立したが,残り3種類については市販されていない構成成分を有機合成化学的に調製する必要があるため,未だ大量調製法の確立に至っていない.また,B12依存酵素ならびにB12輸送タンパク質の組換えタンパク質の調製法を検討したが,未だ機能を保持したタンパク質の大量調製の確立に至っていない.以上の結果から,食品に含まれる疑似B12の精密分析は完了したが,疑似B12が生体に及ぼす影響の解析が遅れている.よって,本研究課題全体としては,やや遅れていると判断した.
残期間が1年間となったので,疑似B12化合物のなかで大量調製できた疑似B12について生体に及ぼす影響を解析する.また,機能的な組換えタンパク質や酵素の調製が困難となり,疑似B12と直接的な相互作用の解析ができない場合は,当初計画を変更して,ヒトのモデル動物である線虫C.elegansや哺乳動物由来COS7細胞を用いて疑似B12がB12の細胞内代謝や機能及ぼす影響を精密に解析する.
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件)
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