研究課題
我々が日常的に摂取している一部の食品に多種多様な疑似ビタミンB12(B12)が多量に含まれている.しかし,疑似B12の生体に及ぼす影響や細胞内代謝については不明であり,日常的に疑似B12を摂取することがB12の吸収を妨げ,細胞内でB12の代謝系を阻害することになれば,B12欠乏症に基づく疾患(神経障害)の発症が危惧される.そこで,平成25年度から平成27年度まで,我が国の主要なB12供給源である貝類・乳類・卵類・藻類に加え,キノコ類などに含まれるB12化合物をLC/ESI-MS/MS法を用いて疑似B12の存在量や分子種を検討した.多種類の食用紅藻類のB12化合物を分析した結果,B12は主要なコリノイド化合物であったが,少量の疑似B12を含む藻類があることが明らかとなった.平成27年度に栄養補助食品として流通している緑藻類クロレラ19種類を分析した結果,一部のクロレラに疑似B12や脱コバルトコリノイドが含まれていることを世界ではじめて明らかにした.チーズ26種類に含まれるB12化合物を分析した結果,ほとんどのチーズでB12が検出されたが,一部で擬似B12化合物が微量に含まれていたが同定には至らなかった.鶏卵においてB12は卵黄のみにタンパク質と結合して存在しており,極めて消化性が悪かったが,卵加工品ピータンの卵黄に含まれているB12は消化性が良いことを平成27年度に明らかにした.また,貝類では,二枚貝や肉食性の巻貝には多量のB12が含まれていたが,藻食性巻貝のアワビやサザエならびにエスカルゴのB12含量は低く,擬似B12が主要なコリノイドであることも平成27年度に明らかにした.また,COS-7培養細胞を用いて擬似B12(シュードB12)がB12酵素に及ぼす影響を検討した結果,シュードB12は培養細胞のB12酵素の補酵素として機能することも,阻害物質として作用することもないことを明らかにした.
すべて 2015
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