研究課題/領域番号 |
25450175
|
研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
和田 小依里 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (60420709)
|
研究分担者 |
佐藤 健司 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00202094)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 日本酒 / 腸内細菌叢 / ペプチド / 抗炎症 |
研究実績の概要 |
日本酒をはじめとした発酵食品は健康食品として長寿と関連していると考えられている。近年,腸内細菌と炎症性腸疾患や過敏性腸症候群などの腸疾患の関連が報告されているが,発酵食品は腸内細菌改善作用を有し腸疾患の改善に働く可能性がある。日本酒に含まれるピログルタミルペプチド(pyroGlu-Leu,ペプチドA,B)の腸内細菌改善作用および抗炎症作用について,細胞およびマウスを用いて研究を行った。pyroGlu-Leu,ペプチドA,Bはいずれも細胞実験において,マクロファージの一酸化窒素産生抑制等の抗炎症効果を有することを明らかにした。また,デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎モデルマウスにおいて,この3種類のピログルタミルペプチドは経口投与にて腸炎を抑制すること,pyroGlu-LeuおよびペプチドBは腸内細菌叢を改善することを示した。甘酒に準じた発酵方法で,麹の精製歩合や発酵温度を変えていくつかのサンプルを作成し,DSS誘発大腸炎モデルマウスに経口投与し,有効性を示すサンプル条件を決定した。このサンプルを用いてヒト予備試験を行い,有害性がないことを確認し,腸内細菌叢改善効果をしめす可能性を認めた。甘酒様サンプルの分析を行ったところ,pyroGlu-Leu,ペプチドA,Bがいずれも単独投与よりもごく低量のみ含有されていた。単独投与ではpyroGlu-Leu 0.1 mg/kg,ペプチドA 1.0 mg/kg,ぺプチドB1.0 mg/kgで有効性を示したが,有効性を示した甘酒様サンプル中のペプチドははそれぞれ 5.0 μg/kg,0.8 μg/kg,0.04 μg/kgであった。そのため,これらのペプチドが相乗効果を示すことが示唆された。今後,さらに症例数を増やし,ヒトにおける効果を実証するとともに腸炎改善メカニズムの解明および生体内動態の解析を行い,臨床応用を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は①日本酒中活性ペプチドが腸内細菌叢に及ぼす影響の評価②マウス組織および細胞実験による日本酒中活性ペプチドの抗炎症効果の分子メカニズム解析を行う計画であった。日本酒中に含有される機能性ピログルタミルペプチドの内,pyroGlu-LeuおよびペプチドBが腸内細菌叢改善作用を有することを示した。また,pyroGlu-Leu,ペプチドA,Bはいずれも炎症細胞であるマクロファージの一酸化窒素産生抑制作用を示し,抗炎症作用を有することを確認した。現在,平成25年度に達成した活性画分中に含まれる経口で効果のある大腸炎抑制ペプチドの同定および上記の結果を論文化し投稿中である。さらに,平成27年度の予定を早めて③作用メカニズムを考慮した、有効ペプチドの摂取方法の評価④日本酒ペプチドのヒト血中動態の解析の予備実験を開始している。甘酒の製造に準じて機能性ペプチドを高濃度含有する,ヒトが経口摂取できるサンプルを作成し,サンプル摂取の安全性を確認した。また,甘酒様サンプル中の有効ペプチド量を分析し,低濃度で有効性を示すことを確認した。これらの状況から現在までの達成度はおおむね順調であるとした。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒト予備試験で甘酒様サンプルの安全性が示され,また腸内細菌叢改善効果が示唆された。今後は過敏性大腸症候群患者のサンプル数を増やして,腸内細菌叢の前後評価のみならず,自覚症状や便性状等の指標からもその有効性を明らかにしていく。その結果を踏まえたうえで,さらに細胞,マウスを用いた実験で各種サイトカイン等を測定し作用メカニズムを明らかにしていく。研究の最終年度に当たるため,これらのデータをまとめ臨床応用を目指していく予定である。
|