研究課題/領域番号 |
25450180
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
井越 敬司 東海大学, 農学部, 教授 (80148973)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | チーズ / 抗酸化 / 熟成 / ABTSラジカル消去活性 / スーパーオキシドラジカル消去活性 / DPPHラジカル消去活性 / 4-ヒドロキシルフェニル酢酸 |
研究概要 |
本研究は,生活習慣病予防の視点から現在最も注目されている食品の抗酸化能に着目し,チーズの抗酸化成分並びにその生成機構を明らかにすることを目的に実施する.また,得られた知見を基に抗酸化能を高めた機能性チーズの開発を目指す.平成25年度研究では次の成果が得られた. 1)ABTSおよびスーパーオキシド(SO)ラジカル消去活性を指標に市販チーズ14種類の抗酸化能を評価した.ABTSラジカル消去活性では活性の差はあるものの,いずれのチーズにおいても比較的高い値を示した.一方,SOラジカル消去活性ではエポワス,ポンレベックのリネンス菌熟成やブルー,カマンベールのカビ熟成チーズに比較的高い活性が認められ,ゴーダやエダムの乳酸菌熟成チーズでは活性が低かった. 2)エポワスチーズのDPPHラジカル消去成分を明らかにしたところ,ブルーチーズからDPPHラジカル消去成分として見出された尿酸,ホモゲンチジン酸(HGA),ホモプロトカテク酸(DOPAC)が同定され,またその他に数種の活性成分の存在が推定された. 3)ABTSラジカル消去活性を指標にブルーとエポワスチーズから活性成分を分離した.その結果,前者からは4-ヒドロキシルフェニル酢酸(HPA)が見出された.本成分はDPPH,SOおよびヒドロキシルラジカル消去の活性は非常に低かった.エポワスチーズからは数種のABTSラジカル消去成分の存在が示唆された. 4)ブルーチーズから分離されたHGA,DOPACおよびHPAはチロシンの代謝産物である.そこでポテトデキストロース培地にチロシンを添加後,Penicillium roquefortiで培養したところ,培地中にこれらラジカル消去成分が蓄積された.従って,ブルーチーズ中のこれら活性成分はチーズ中のチロシンからPenicillium roquefortiによって生成されたものと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画は,①チーズのABTSおよびスーパーオキシド(SO)ラジカル消去活性を調べ,その活性成分を明らかにする.②チーズの抗酸化成分の生成経路を明らかにする,の二課題の達成を挙げた. ①では,市販チーズ14種類を用い,これらのチーズの抗酸化能を評価した.また,DPPHラジカル消去成分としてエポワスチーズから尿酸,ホモゲンチジン酸(HGA),ホモプロトカテク酸(DOPAC)を明らかにし,ABTSラジカル消去成分としてブルーチーズから4-ヒドロキシルフェニル酢酸(HPA)を,エポワスチーズからは数種の活性成分を新たに見出した. ②の課題として,ブルーチーズに見出されたHGA,DOPACおよびHPAはブルーチーズに使用されるPenicillium roquefortiによりチーズ中に存在するチロシンから生成されることを証明した. 以上の成果から,数種の抗酸化成分が同定に至らなかったものの,計画の二課題はおおむね順調に目的を達成した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,チーズの抗酸化成分並びにその生成機構を明らかにするとともに,得られた知見を基に抗酸化能を高めた機能性チーズの開発を目指す実用的研究である. 平成25年度の研究成果の結果,チーズの抗酸化成分はチーズの種類によって異なることが知られた.また,ブルーチーズの抗酸化成分としてポリフェノールやモノフェノール等の抗酸化ペプチド以外の活性成分が見出され,これら活性成分はPenicillium roquefortiがチロシンから生成することが明らかにされた. そこで平成26年度以降では,抗酸化ペプチドの活性発現の構造的特徴の究明や抗酸化成分の生物アッセイによる抗酸化能の検証研究等の当初の研究計画(平成26年度計画)を縮小し,抗酸化能の高いチーズからの抗酸化成分の分離精製並びに成分同定の研究および生成経路解明の研究を今後とも継続することとした.また,Penicillium roquefortiの脱脂乳培養より得られる菌対外粗酵素液を用い,ブルーチーズより見出された抗酸化成分類(抗酸化ペプチド,ポリフェノール,モノフェノール等)の生成における試験管レベルでの研究を新たに加え,ブルーチーズ中の抗酸化成分の生成を酵素レベルで検証し,機能性チーズ開発のための基礎的知見を得ることとした.そして,これら成果を基に最終的に酵素修飾チーズ(酸化ストレス軽減化チーズ)の開発を試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度予算使用計画において計上した人件費・謝金およびその他(主として修理費,論文投稿費等)の予算執行が全く行われなかった.その理由としてこれら項目の支出はほかの予算により執行されたためである.一方,物品費使用額は当初計画より大幅に増え,それは高額消耗品を購入したためである. 翌年度においては人件費・謝金およびその他の項目の予算を減額し,翌年度に繰り越した金額も含め物品費を増額することとし,計画する.
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