研究課題/領域番号 |
25450181
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
小林 謙一 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (80434009)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ポリフェノール / オリーブ葉 / 蛍光標識 / CLEM法 / 機能性食品 / オレウロペイン / ヒドロキシチロソール / 大腸癌 |
研究概要 |
本研究は、機能性食品成分の中でオリーブ葉ポリフェノールであるオレウロペインおよびその代謝産物であるヒドロキシチロソールを蛍光標識化し、その大腸癌細胞内での挙動を光学―電子線相関顕微観察法(以下CLEM法)で、詳細に観察できるようにするとともに、これらの成分の新たな機能性を明らかにしようとするものである。平成25年度は、研究実施計画に基づき、以下の検討を実施した。 まず第1に、オレウロペインおよびヒドロキシチロソールが、大腸癌モデル細胞であるCaco-2細胞のアポトーシスに及ぼす影響について検討した。MTT法により、細胞生存に及ぼす影響を検討した結果、両分子とも濃度依存的に細胞生存数の減少が認められ、細胞毒性を有することが明らかとなった。その細胞死のメカニズムを明らかにする目的で、TUNEL染色およびアポトーシス関連遺伝子であるCaspase-3、Bcl2、Bax遺伝子の発現解析を実施した。その結果、予想に反し、顕著なTUNEL染色像が観察されず、アポトーシス関連遺伝子発現に関しては、逆相関を示した。以上の結果より、両分子が、Caco-2細胞に与える細胞死は、アポトーシスではないことが強く示唆された。今後は、他の細胞死(ネクローシスなど)に焦点を絞り、解析を継続していく予定である。 第2に、両分子のフルオロセイン-4-イソチオシアネート(FITC)による蛍光標識化を試みた。しかし、オレウロペインに関しては、分子内の水酸基の数が多いので合成過程が複雑になることが予想されたために断念した。それに対して、ヒドロキシチロソールは、構造的にも標識化可能と判断し、合成反応を試みた。その結果、純度の高いFITC標識化ヒドロキシチロソールを合成することに成功した。 第3に、CLEM法に必要なコーティングディッシュの自作を試みた。今回は、カーボンではなく、金を用いてコーティングを行った結果、明瞭な目印の付いたディッシュを作製することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の申請段階での平成25年度の研究計画・方法の欄に記載した事項は、1)オリーブ葉ポリフェノールが大腸がんモデル細胞に及ぼす影響評価、および2)蛍光標識オリーブ葉ポリフェノールの作製であった。 1)に関しては、ほぼすべての実験過程に着手した。その結果、オリーブ葉による大腸癌細胞死がアポトーシスでないことが明らかになった。 2)に関しては、ヒドロキシチロソールの蛍光標識化に着手して、蛍光標識化に成功した。 以上の状況から、本研究課題は「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究の推移から、オレウロペインおよびヒドロキシチロソールが、Caco-2細胞に与える細胞死のメカニズムについて、アポトーシス以外のネクローシスやオートファジーなどが起こっているのではないかという仮説の下、解析を継続していく予定である。 また、蛍光標識化ヒドロキシチロソールが完成したことを踏まえて、本分子をCaco-2細胞内に取り込ませたうえで、細胞内の局在について、共焦点レーザー顕微鏡を用いて詳細に解析していく予定である。また、CLEM法についても、実施していきたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ順調に研究は推移していたが、電子顕微鏡関連の予備的検討をするまでには至らなかったので、その分の経費が当該助成金が生じた理由である。 電子顕微鏡関連の試薬や消耗品に充当する。
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