研究課題/領域番号 |
25450183
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
長田 恭一 明治大学, 農学部, 准教授 (30271795)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 酸化コレステロール / コレステロール / ラット / リポ蛋白質 |
研究概要 |
食事由来酸化コレステロール(OXC)は、脂質代謝を撹乱し、動脈硬化を誘発する可能性がある。本研究では、OXCの生体内動態について検証した。 重水素標識したコレステロールを加熱酸化した後に、コレステロールとOXCに分画した。8週齢の雄性Wistar系ラットに重水素標識されたコレステロールまたはOXCをそれぞれ経口投与し、12時間後に腹部動脈より採血死させ、血液、肝臓、心臓、腎臓、胃、小腸、大腸内容物ならびに糞便を採取した。血漿は超遠心分離により、HDL、VLDLおよびLDL画分に分画した。得られた各組織とリポ蛋白質から脂質を抽出して、GC-MSを用いてステロール成分を測定した。 投与したコレステロールは、各リポタンパク質画分および各組織から検出された。よって、投与12時間後には、肝臓に取りこまれた後に、末梢組織に運搬されていることが確認された。同様に種々のOXCも各リポタンパク質画分より検出され、かつ心臓や腎臓からも検出された。投与したOXCもコレステロールと同様にリポタンパク質に組み込まれて、末梢組織に移行することが明らかとなった。 次に、コレステロールを加熱酸化した後に、酸化コレステロールを多く含む混合物を調製し、6週齢の雄性Wistar系ラットに経口投与し、経時的に採血死させて、血漿と肝臓を得て種々の酸化コレステロールの生体への取り込みについて詳細に調べた。肝臓の酸化コレステロールレベルは投与してから8時間後に最大となって、その後そのレベルは低下した。肝臓で検出された酸化コレステロールは、その構造によって取り込まれる速度が異なっていた。短時間でその濃度が上昇するものと長時間にわたって上昇していくものに分類された。加工食品に多く見出される7β-hydroxycholesterolは前者のタイプであり、7-ketocholesterolは後者のタイプであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた項目についてほぼ結果が得られている。血漿の酸化物の分析も統計処理を残すだけとなっており、おおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
酸化コレステロールが食事由来で体内に吸収された後の代謝については現在のところ不明な部分が多い。最近になって、肝臓では7-ketocholesterolが7β-hydroxycholesterolに変換される可能性がin vitroで示された。そこで、今年度は、動物に酸化コレステロール混合物を投与した後に、肝臓の7-ketocholesterolと7β-hydroxycholesterolの濃度変化を調べたいと考えてる。また、肝臓組織を用いて7-ketocholesterolの7β-hydroxycholesterolへの変換が生じることも確認したい。さらに、加齢に伴って、動脈硬化発症にどのように酸化コレステロールが関わっているのかも、上記の現象を関連付けて調べたいと考えている。さらに、生体内に吸収された酸化コレステロールがどのようにクリアランスされているのか、その一端を知るために、胆汁酸への異化が生じているのか、あるいは、他の代謝過程を経て胆汁中に存在するのかも調べる予定である。
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