自作したコレステロール酸化物をラットに投与した後、種々の臓器に酸化コレステロールの存在を確認した。これまでに明らかにしたように食事由来で吸収された酸化コレステロールはリポ蛋白質に組み込まれて末梢組織に運搬されていることが実証された。 次に、ラットに6-ketocholestanolあるいは7-ketocholesterolを胃内に強制投与したところ、肝臓機能パラメータが高くなった。また、その影響は7-ketocholesterolと比べて6-ketocholestanolを与えた方が強かった。この機序の一因は、6-ketocholestanolの吸収率が7-ketocholesterolよりも高く、強い細胞毒性によりCYP3A2の活性が阻害されたためではないかと思われた。6-ketocholestanolと7-ketocholesterolは肝機能へ影響を及ぼすだけではなく脂質代謝撹乱作用も示した。また、この作用も7-ketocholesterolよりも6-ketocholestanolの方が強いことが明らかとなった。 日本人が食事から摂取する外因性の酸化コレステロールの摂取量は、加工食品の摂取量増大に伴って増え続けると予想される。酸化コレステロールの吸収性はコレステロールよりも低いが、吸収されるとリポ蛋白質に組み込まれて末梢組織に運搬され、そのまま蓄積する場合、酵素によって構造が変化する場合、親水基が結合して排出される場合に区分されることが大凡明らかとなった。今後の課題として、胆汁中への排出行程、体内全域における蓄積行程等について明らかにしていく必要があると思われた。
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