研究課題/領域番号 |
25450184
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
早瀬 文孝 明治大学, 農学部, 教授 (80105246)
|
研究分担者 |
渡邉 寛人 明治大学, 農学部, 教授 (20270895)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | メイラード反応 / メラノイジン / コク / ピロロピロール |
研究実績の概要 |
申請者らは食品の褐色化の過程で青色、赤色などさまざまな「色素」が生成することを見出し、それらがピロロピロール構造を有することを明らかにしている。これらの色素が中間体となり最終的にはメラノイジンを生成するが生成機構については依然として不明である。本研究では揮発性成分や食品の褐色化で生成するメラノイジンが「コク」に対し、どのように関与するかを科学的に明らかにすることを目的としている。 本年度では八丁味噌中のMELがコクに与える影響について検討を加えた。八丁味噌の水溶性画分を限界濾過により3-5 kDa、5-10 kDa、10 kDa以上の3つの画分に分け、それぞれをHM-LMW、HM-MMW、HM-HMWの八丁味噌MELとした。各八丁味噌MELと八丁味噌の水溶性画分から分離した3 kDa以下の画分を、5%八丁味噌水溶液におけるそれぞれの含有量と同濃度となるようにうま味溶液(0.5% NaClと0.3%グルタミン酸ナトリウム水溶液)に添加し、再構成溶液を調製した。再構成溶液からHM-LMW、HM-MMW、HM-HMWをそれぞれ除いた溶液を調製し、コク(厚み、持続性)について再構成溶液と比較評価した。その結果、八丁味噌のコクにHM-LMWとHM-MMWが寄与することが示された。一方、メラノイジンの生成機構を調べるために、 glycine-D-xylose系で生成する新奇青色色素Blue-M10を単離・生成し、構造解析を行った。Blue-M10は主要な青色色素であるBlue-M1の側鎖からC2H3(OH)が脱離したピロロピロール構造を有し、Blue-M1の還流によってBlue-M10が生成する結果より、Blue-M1の側鎖が開裂し、Blue-M10が生成すると示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画では1)メラノイジン前駆体として青色色素および赤色色素、黄色色素が普遍的に生成するか明らかにするため、種々のアミノ化合物と5,6炭糖に対し黄色、赤色、青色色素の生成を解析し、HPLCにて生成物を単離・精製し、化学構造を明らかにする。2)主要青色色素Blue-M1の前駆体のI-265を単離・精製し構造解析を行い、青色色素の生成機構を明らかにする。一方、青色色素の重合によりメラノイジンが生成する機構を解明するために、青色色素の変化と生成する高分子化合物を同定する。3)市販つゆの成分の香気成分を分析し、つゆの香気特性に寄与度の高い成分を同定する。4)同定した香気成分のうち、コク付与に関わる香気成分を明らかにする。5)基本五味、コクについて官能評価を行い、メラノイジンの呈味特性について検討する。影響の認められた物質についてはBIACOREを用いて呈味物質との相互作用を調べる。6)コク付与物質のグルタチオンと反応するカルシウム感知受容体(CaSR)を発現する細胞を用い、メラノイジンに対する応答性を検討しコク付与成分であるメラノイジンのCaSRアゴニスト活性を明らかにする。 これらの計画はおおむね順調に進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度の計画1)~6)について引き続き検討する。八丁味噌のメラノイジンにコク付与作用が認められた。引き続き、八丁味噌の香気成分のコク付与作用について検討を加える。また、メラノジン中間体と考えられる種々の色素に含まれる基本構造はピロロピロールであると考えられる。本年度で新たに同定した青色色素の基本構造もピロロピロール構造を有していた。今後は、ピロロピロールアルデヒド(PPA)構造がタンパク質と還元糖の反応によるメラノイジン形成においても関与するかについて検討する。具体的にはNα-acetyllysineをモデルとして用い、タンパク質にピロロピロール化合物が生成するか解析する。 申請者らは既にグルコースやグリセルアルデヒドがLys-Lys間や、Lys-Arg間を架橋した構造を見出しており、このような構造の解析基盤技術は確立している。 キシロース-グリシン反応系より精製したPPAを化学的にBSAにカップリングさせたもの(PPA-BSA)をハプテンとして用いて抗PPA抗体の作製を行う。PPA特異的抗体を調製し、タンパク質中のPPA含量の定量法、味噌などの褐色食品中のメラノイジンの定量法について検討を加える。さらに、うま味溶液にピロロピロール化合物を加え、コク付与作用を官能評価により解析する。これら研究成果を総合的に検討・検証し、コク寄与成分に対し科学的に食品のおいしさについて考察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
抗体作成の実験計画が次年度に繰り越されたために差額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
抗体作成のための物品費を計上した。
|