申請者らは食品の褐色化の過程で青色、赤色などさまざまな「色素」が生成することを見出し、それらがピロロピロール構造を有することを明らかにしている。これらの色素が中間体となり最終的にはメラノイジンを生成するが生成機構については依然として不明である。本研究では揮発性成分や食品の褐色化で生成するメラノイジンが「コク」に対し、どのように関与するかを科学的に明らかにすることを目的としている。 本年度ではD-Xylose (0.8 M)と6-Aminohexanoic acid (0.2 M)をインキュベートし、黄色色素PPA-AH1を各種クロマトグラフィーにより単離、精製した。PPA-AH1をハプテンとしてキャリアタンパク質であKLHに結合させることで抗原とし、BALB/c 系雌マウスに免疫した。免疫したマウスから血清を採取して抗血清を得た。得られた抗血清で競合ELISAを行った。ELISAによる結果より、免疫したマウスから得た抗血清は7週目以降から顕著な抗体価の上昇を示した。また、競合剤として、PPA-AH1生成時に用いる化合物、ピロール化合物、ピロロピロール化合物を用いた競合ELISAの結果、抗血清がピロロピロール構造特異的抗体であることを確認した。競合剤としてモデル系メラノイジン、タンパク質サンプル、みそサンプルを用いた競合ELISAの結果、抗血清はそれぞれのサンプルを認識した。この結果より、メラノイジン中、タンパク質サンプル中、みそサンプル中においてピロロピロール構造の存在が示唆された。さらに、メラノイジン前駆体の青色色素画分(BF)のうま味溶液におけるコク増強効果を官能評価したところ、持続性の増強効果が認められた。以上の結果より、メラノイジンは基本骨格としてピロロピロール構造を有し、この構造がコク増強効果を有することが示唆された。
|