トレハロースのタンパク質凝集抑制効果を解明するため、モデルペプチドとしてアルツハイマー原因ペプチドであるβアミロイドペプチド40(Aβ40)を用いて、生体間相互作用解析装置Biacoreを使用した相互作用解析を行った。その結果、トレハロースはAβ40の凝集を強く抑制した。またKinetics解析より、トレハロースによるAβ40凝集の阻害様式は拮抗阻害型であること、阻害係数Kiはトレハロース0.81mM(0.02%)となった。 次にトレハロースとAβ40が直接作用していることを確認するため、トレハロースとAβ40混合液のNMR解析(1H-NOESY、600MHz)を行った結果、トレハロース1位および2位プロトンとAβ40リングプロトン間に明確なNOEが観測され、トレハロースとAβ40は直接錯体を形成し、Aβ40の凝集を抑制することがわかった(低温生物工学会年会にて発表した)。 次にアルツハイマー型モデルである老化促進マウス(SAM/P1)を用いて、トレハロース経口摂取がAβの蓄積・凝集に及ぼす影響を調べた。トレハロース5%水溶液の2か月連続飲水摂取により脳萎縮が抑制された。 次に脳ホモジネート中のAβ含量をELISA法にて測定したところ、トレハロース5%水溶液の飲水摂取により有意に低下した。一方、脳ホモジネート中のトレハロース含量は0.71μMと僅かであり、Biacoreで測定したKi値の1/1000であった。すなわち、in vivoにおけるトレハロースによるAβの蓄積・凝集抑制はトレハロースとAβの直接作用ではないことがわかった。
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