研究課題/領域番号 |
25450193
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
矢野 裕之 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所・食品素材科学研究領域, 上席研究員 (20355580)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ジスルフィド / チオレドキシン / グルタチオン / 蛋白質 |
研究概要 |
本研究では、申請者が開発した「ジスルフィドプロテオーム」手法を用い、米粉や小麦粉等、食品原料に汎用される穀物粉に含まれる蛋白質のジスルフィド様態を包括的に解析する。また、ジスルフィド様態の構造変化が食品の物性や消化性、アレルゲン性にどのような変化を与えるか包括的に解析し、新規食品の戦略的開発のための基盤情報を得ることを目的とする。さらに新しい特徴をもった食品開発のモデル研究を実施する。 本年度は研究計画に従い、米粉や小麦粉等に含まれる蛋白質のジスルフィド様態の包括的な解析を実施した。米粉では、アレルゲンが多いとされる塩溶性画分に分子内ジスルフィド結合をもつ蛋白質が多く、その他の画分では分子間ジスルフィド結合をもつ蛋白質が多くみられたがジスルフィド結合の数は2~数個程度に限られていた。例えば米貯蔵蛋白質の70~80%を占めるグルテリンは分子間、分子内ジスルフィド結合をそれぞれ1個ずつ有する。一方、小麦蛋白質では複数の分子間ジスルフィド結合により巨大蛋白質を形成する場合が多く、これが生地の粘弾性に寄与する。小麦が製パン性などの食品物性について、ほかの穀物に対して優位性をもつ原因が確認された。 また、種々の還元剤が個々の食品蛋白質に対する作用を詳細に解析したところ、ジチオトレイトールなどの還元剤やチオレドキシンなど、単純にジスルフィド結合を切断し、2個のSH基を露出させる化合物を作用させた場合と、片方のSHを修飾するグルタチオンを作用させた場合で、作用を受ける蛋白質が異なることが確認された。また、作用後の蛋白質構造も異なることが確認された。これは、ジスルフィド結合に作用する因子によって蛋白質に与える影響が異なることを予想させる結果であり、食品の特性を制御する多様な方法があることを示す研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は研究計画に従って米粉や小麦粉等、食品原料に汎用される穀物粉に含まれる蛋白質のジスルフィド様態を包括的に解析し、期待通りの研究成果が得られたこと。また、26年度以降に実施を予定していた還元剤の作用について一部前倒しで研究を進め、興味深い研究結果が観察されたことから、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
提案書に記載したとおり、上記穀物粉生地にグルタチオンやチオレドキシン等、蛋白質のジスルフィド様態を改変できる化合物を作用させ、食品蛋白質の構造変化が食品の物性や機能性、アレルゲン性にどのような変化を与えるか、包括的に解析する。また、新しい特徴をもった食品開発のモデル研究について研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は学会発表旅費として10万円を申請していたが、申請者が在籍する食品総合研究所と同じつくば市内にある筑波大学で研究報告したため、旅費を使用しなかった。 本研究課題の推進のため、次年度の研究費は交付申請時の計画通り使用する。なお、26年度はアレルゲン蛋白質の詳細な解析を行う予定であるが、次年度使用差額で精製アレルゲンを購入し、次年度に請求する研究費と併せて研究のいっそうの進展に充当したい。
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