研究課題/領域番号 |
25450194
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
日下部 裕子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品機能研究領域, 上席研究員 (90353937)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 味覚 / 受容体 / 構造機能 / 情報伝達 / 膜移行 |
研究実績の概要 |
甘味受容体の構造機能特性の解明を目的とし、様々な種の甘味受容体T1r2/T1r3について膜移行機序の比較を行った。昨年度までに得たヒト、霊長類、齧歯類、魚類のT1r2/T1r3を用いて、膜移行能の比較を行った。その結果、齧歯類のマウスや魚類のT1r3は単独で細胞膜上に移行できることが明らかになった。一方、3種類の霊長類のT1r3の膜移行能を調べたが、ヒトT1r3と同様、単独では膜移行できないことが明らかになった。これらの解析結果から、T1r3は単独では膜移行できないように進化したことが強く示唆された。さらに、T1r3のC端を一部欠損させた変異体を構築して膜移行を調べたところ、全てについて膜移行能が著しく低下することを見出した。よってT1r3のC端には種を超えた膜移行の仕組みが存在する可能性が有ると考えられる。 また、高濃度の高甘味度甘味料を甘味受容体に作用させた時におこる甘味阻害効果について、ヒトとマウスの甘味受容体を用いて比較した。その結果、マウス甘味受容体では甘味阻害効果を観察できなかった。また、膜外領域がヒトT1r3由来、膜貫通領域がマウスT1r3由来の甘味受容体についても同様の解析を行ったところ、ヒト甘味受容体と同様の阻害効果が確認できた。よって、この甘味阻害効果はヒト甘味受容体の膜外領域で起こる可能性が高いと考えられる。 その他、ヒト甘味受容体の四量体形成の可能性を調べるために、FRET解析ができるように細胞膜外領域にタグを付加した甘味受容体変異体を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ予定通りに作成した甘味受容体について膜移行や甘味応答測定を行うことができたため。また、高濃度甘味料の甘味阻害効果および洗い流し時に発生するWater-sweet現象については、まず高濃度での甘味阻害効果について解析することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
T1r3のC端で起こる膜移行能の仕組みの解明を中心に、甘味受容体の構造機能について進化を考慮しながら解析する。また、FRET解析を行うことで甘味受容体の四量体形成能についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費を効率的に使用したために発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画通り使用する。なお、次年度使用額の183,122円については、研究費を効率的に使用したために発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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