研究課題/領域番号 |
25450197
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 |
研究代表者 |
渡辺 嘉 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 生物・生活材料研究部, 研究主任 (60416310)
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研究分担者 |
室田 佳恵子 近畿大学, 理工学部, 講師 (40294681)
佐藤 博文 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, その他部局等, 研究員 (70443546)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | MCPD / グリシドール / 膵リパーゼ / エポキシド |
研究概要 |
食品中のリスク懸念物質の異性体2-MCPDと、オレイン酸をEDC/DMAPによりエステル化して2-MCPDジエステル(DE)を新規合成した。2-MCPDDEの、ブタ膵リパーゼによる加水分解速度をジアシルグリセロール(DAG)及び3-MCPDDEと比較した。FFAの遊離速度においてMCPD異性体間に殆ど差は認められなかったが、DAGに対しては約1/2だった。3-MCPDからはMCPDモノエステル(ME)とFFAが主に生成し、遊離MCPDの検出量は低かった。一方、2-MCPDからはMCPDMEの検出量は低く、遊離MCPDとFFAが検出された。従って、膵リパーゼは3-MCPDDEの1位のアシル基を加水分解して2-アシル-MCPDとFFAを、2-MCPDDEからは1位のアシル基2つを分解して、遊離2-MCPDとFFAを生成する差異が認められた。また、油脂中にはMCPDの他に、グリシドール(エステル)も含まれる。化学的にグリシドールは胃酸などの酸性条件下でエポキシドが開環しグリセロール(エステル)になる可能性があるが、未検証であった。そこで、胃モデル溶液による疑似環境下、pHと、グリシドールとMCPDとの物質挙動の相関を、NMRにより直接検出した。絶食条件下胃モデル溶液(0.2%NaCl, pH1.2)中では、グリシドールからグリセロールへの変換(3時間で86%)が認められたほか、3-MCPDが少量生成した可能性も示唆された。一方、非絶食条件下胃モデル溶液(2%NaCl, pH6)では、本変換は観察されなかった。従って、グリシドールが直接胃酸と接触すればグリセロールへに変換される可能性が示唆された。さらに、ドレッシングを模して調製した2%NaCl, 5%酢酸(pH2.2)液中でも同様の変換が検出され(24時間で50%)、加工食品中でグリシドールの無毒化が期待されることも判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載した今年度遂行すべき各項目について、順調に遂行し、期待通りの結果を得られている。また、来年度に遂行する予定の項目を滞りなく進めるため、予備的な検討も進めた。したがって、本研究は計画に従って、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、これまでに毒性評価がなされていない新規異性体、2-MCPDを主なターゲットとし、培養細胞系で腸管吸収性および細胞毒性をin vitro評価する。さらに本年度、pH依存的なグリシドールからグリセリンへの変換を認めたが、エステル体の挙動も確認する必要が生じたため、平成26年度の検討項目として加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度に計画している培養細胞を用いたin vitro実験の予備的検討を平成25年度に一部開始したところ、申請時に予測していた以上に消耗品代がかかることが判明した。したがって、本年度残金は物品費として次年度に繰り越す。 平成26年度に計画している培養細胞を用いたin vitro実験の物品費として使用する予定。
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